エリート外交官と至極の契約結婚【極上悪魔なスパダリシリーズ】

　俺様なんだけど、本当にスマートに女性をエスコートするのよね。

　車が走り出し、月城さんが不意に口を開く。

「今夜はホテルで食事をしよう」

「え？」

「念のために。それに、俺の送別会をしてくれないのか？」

「送別会って……クスッ」

　契約上の結婚が解消されるのもそう遠くない。もう二度と会わないかもしれないのだ。

　そう思った瞬間、胸がズキッと痛みを覚える。

「わかりました。お礼も兼ねて私にご馳走させてください」

「決まりだな。レストランは任せる」

　月城さんはニヤッと口角を上げた。


　ハーキム氏の目から逃れられ、今日の私はいつもよりも生き生きとお客様との接客を楽しんでいた。

「マカナ、ランチへ行きましょう」

　チェックアウト済みの部屋掃除の依頼を清掃部に依頼したところへ、ミランダがやって来た。
「ミランダ、おつかれさま」

　交代のフロントスタッフに席を外す旨を告げて、ミランダとともに社員用のレストランへ向かう。

　社員用レストランは交代で食事に来るとはいえ、従業員が約二千人いるので混んでいる。

　私たちは四人掛けの空いているテーブルを見つけ、ブッフェ式の料理を盛ったトレイを置いた。

　ミネラルウォーターのペットボトルを口にしてから、ひよこ豆のコロッケ〝ファラフェル〟をナイフとフォークを使って食べ始める。

「今日のマカナは楽しそうね。あ！　マリッジリングね！」