エリート外交官と至極の契約結婚【極上悪魔なスパダリシリーズ】
 そこで、通勤に使っている私の車はホテルのパーキングへ置いておき、同僚のミランダの車で自宅へ送ってもらうことにした。

 さりげなく辺りを見回しながらハーキム氏や側近の姿がないかを確認してミランダの運転する助手席に乗り込む。

 あと少しで日没になり、辺りは暗くなる。

 ミランダは同じフロントで働くひとつ年上のアメリカ人だ。彼女は既婚者で旦那様もアメリカ人。彼が電気技師でこちらに駐在している関係で、子どもがいないミランダは時間に余裕があるため働き始めたという。

 私がホテルに勤めて一年ほど経った頃ミランダが加わり、すぐに意気投合した。退勤後も会ったり、休日には旦那様も一緒にバーベキューをしたりして、ドバイでは一番の友人だ。

 そんなミランダは私の一大事に協力してくれている。

「本当にハーキム氏はどうかしているわね」

 ミランダは隣で体を沈めて座る用心深い私に同情している。

 ホテルのパーキングを出て海沿いの道路を走り始めると、私は体を起こした。

「いくら断ってもあきらめないのは、断られた経験がないからよね。王族の親戚だからって、気持ち悪いわ」

 真面目そうに見えるミランダは意外と口が悪いが、ハーキム氏に関しては私も同じ意見だ。

「ここには父が異動になるまでいたいと思っているし……」
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