エリート外交官と至極の契約結婚【極上悪魔なスパダリシリーズ】
 英語で話している相手はどうやら航空会社のようだ。困惑しながら聞いていると、今日のフライトをキャンセルし、明日のチケットを手配している。

「そうです。もうひとりはMS.MAKANA ASAOKA」

 入籍したが、パスポートの名前は変えていない。

 私の名前が出てギョッとなる。

 電話を切りポケットにスマホをしまうのを待ってから口を開く。

「どうしてチケットを?」

「お前をここに置いていけない。俺が離れれば大変なことになる」

「月城さん……」

「今はとりあえず日本に行くのがベストだと思わないか?」

 そう尋ねられ、ここに残った場合の身の安全を思案したが、もうそれしかないのだと悟る。

「でもホテルの仕事が……」

「俺が話をつける。まずは領事館へ行って浅岡領事に会おう。俺に任せろ」

 月城さんに甘えてしまっていいのだろうか。これ以上迷惑をかけられないと思うのに、そばにいてくれることがうれしい。

 さっきの彼は本当にヒーローのようだった。


 領事館に現れた私と月城さんに父は驚きを隠せなかった。状況を説明されて、表情が険しくなっていった。

「真佳奈、私はもう黙っていられない」

 怒り心頭の父はソファから乱暴に立ち上がる。

「お父さん……」

「領事、落ち着いてください。決定的な証拠はないんです」

「月城くん……」

 冷静に諭されて父は腰を下ろした。
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