エリート外交官と至極の契約結婚【極上悪魔なスパダリシリーズ】
 彼を仰ぎ見る形になって驚いているうちに、月城さんの顔が近づいてくる。

 次の瞬間、額同士が合わさった。

「やっぱりお前熱がある」

「え……」

 月城さんは熱を確かめたかったのだ。

「だから眠かったのね……」

 手で確かめればいいのに。心臓を高鳴らせてしまった自分がバカみたいだ。

「自分の体調管理もできないのか?」

「だ、だって、安堵したせいかと思ったから……。これくらい平気ですから」

 自分の額に手を置いてみて、熱いとは思ったがふらふらするほどでもない。

「行くぞ」

 月城さんは私を促し、再びカートを押して待っていたタクシーに乗せた。


 三十分後、空港から近いプトラジャヤというビジネス地区にある高級ホテルに到着した。ここから政府機関まではすぐらしい。

 チェックインした部屋に案内されて、慌てて後ろにいる月城さんを振り返る。

「一緒の部屋……なんですか? しかもスイートルームだなんて……」

「ああ。今は国際見本市の真っ最中で、多くのビジネスマンが滞在しているせいで空いていない。俺たちは夫婦なんだから問題ないだろう? それよりも、早くベッドに横になれ」

 スイートルームだなんていったいいくらかかるの? 外交官でも経費では落ちないだろう。

 しかもベッドはひとつしかない。キングサイズのベッドだけど、同じベッドで寝るのは……。
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