エリート外交官と至極の契約結婚【極上悪魔なスパダリシリーズ】
「真佳奈、なにも考えないで今は寝ていろ。俺はこれから担当者に会ってくる。夜までかかると思う。すまないが食事はルームサービスを」

 彼はデスクの引き出しからルームサービスのファイルを手にして、キングサイズのベッド横にあるサイドテーブルに置く。

 冷蔵庫からミネラルウォーターのペットボトルも出して私に押しつけた。

「水をたくさん飲めよ」

「はい」

 月城さんはスーツの袖を少し上げて腕時計で時間を確認する。

「行ってくる。様子がおかしいと思ったらすぐに連絡をくれ」

 私がコクッとうなずくのを見て、彼はビジネスバッグを持って颯爽とした足取りで出ていった。

 窓から見える景色はゴルフ場だ。緑が多く、ドバイの景色とはまったく違う。機上から見た海の色もドバイのような澄んだブルーではなかった。

 ハーキム氏にこれからはわずらわされずに喜ぶべきなのに、ドバイが好きだったのですでにホームシックに襲われ始める。

 半日も経っていないが、父に無性に会いたくなった。

「熱があるせいで感傷的になっているみたい」

 独り言ちて、スーツケースからルームウエアを出して着替えると、ベッドの端に横たわった。


 額にひんやりしたものが置かれて、ビクッと肩を跳ねさせて瞼を開けた。

「あ……」

 ベッドの端に座る月城さんがいた。

 ひんやりしたものは濡れタオルのようだ。
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