3次元お断りな私の契約結婚
自分を必死に落ち着かせた。ちょっと待ってほしい、予想外すぎる展開で全然ついていけない。特に恋愛偏差値ゼロに近しい私にはまるで無理。
なんとか平然を装いながら続きをたずねた。
「そ、それで?」
「怖かった」
「感想聞いてないんだけど」
「いや本当に怖かったんだって。俺今までも変な女に言い寄られたことあるけど群を抜いてすごかった。だから穏便に済ませたくて、もう少し飲んでからにしませんかって誘導したんだよ。んで部屋で二人飲んで、飲みまくって。つーか飲ませまくって、潰した」
「それって普通男女逆なんじゃ……」
「ほんとそれ。かなり飲ませたよ。んで潰れたところをこっそり出てきたわけだけど、それで勘違いでもしたんだろうな。なんせあの女途中からほとんど裸で飲んでたし」
「ひぇえ!」
この私にはあまりに刺激が強すぎる話だった! 脳内はぐるぐると混乱しているが、いや細かいことはどうでもいい。そう、ちゃんと真意だけ見なきゃ。
私はぐっと巧に顔を寄せて聞いた。
「じゃあ……安西さんと何もしてないの?」
「あんな見るからにやばい女としてたまるか」
私は両手で顔を覆った。
まさか、そんなオチだったなんて。じゃあ、安西さんのお腹の子は他の男の子供というわけだ。私は巧と離婚しなくていいんだ……。
こんなことなら、すぐにでも聞いておけばよかったのに。
呆然としている私の頭を、そっと巧が撫でた。
「……ごめん。不安にさせて」
「ううん、巧は悪くない。ただ、昨日安西さんの名前を聞いたら珍しく戸惑ってたから、私は勝手に真実だって思い込んじゃって」
「あの女どうみてもヤバいやつだったから、俺の結婚聞きつけて何かしてきたのかと思って。あの日以来ずっと大人しかったからもういいかと安心してたんだけど」
「そういうこと……」
はあ、と大きくため息をついた。私の頭を撫でていた手が、そっと降りて私の手を握る。
巧はじっとこちらを見て言った。
「でも、杏奈がそれでもそばにいたいって言ってくれて嬉しかった」
彼の手の力は強く、痛いと感じるほどだった。それでもその力強さが、今は嬉しい。
髪を振り乱してスウェット姿で真夜中に帰ってきてくれたのが、私は嬉しい。
「信じてほしい。嘘じゃないから。安西唯とは何もない。俺は杏奈としか結婚したくないし、もし杏奈がいなくなったら一生独身でいる」
「……信じてる」
「だから、今みたいに何か不安なことはすぐに言って。俺以外に言うな。杏奈が何をわがまま言っても、全部受け止める自信があるから」
巧はそうキッパリいって、私を抱きしめた。
熱い彼の体温が心地よく、涙を誘う。
すべて一人で抱えて考え込むのが本当に愚かなんだとよくわかった。恋愛初心者はこれだからいけない。最悪の事態になるのが怖くて一歩を踏み出すことすらできなかった。
自分に正直にいなくちゃならない。欲しいものはちゃんと欲しいって言わないと、手に入らないんだ。
「うん、ありがとう。ちゃんと言えてよかった」
涙声で答えた私を、巧はさらに強い力で抱擁する。
安心感からか、一気に眠気が襲ってきた。巧の胸の中で眠ってしまいそうなくらいふわふわした感覚でいると、突然私を離した巧が立ち上がる。
はて、と巧を見上げると、彼はとんでもなく座った目でどこかを見つめていた。やや引くほど顔が怖い。
「た、たくみ?」
「安西唯と話す。杏奈も来い」
「え、う、うん。連絡先は聞いてるけど」
「安西唯の親も呼ぶ」
「え、安西グループの社長様を……!?」
「ああでも、少しだけ待ってくれ。全てが揃うまで」
私は首をかしげた。揃う、とは?
巧は腕を組みどこか一点を見つめながら吐き捨てた。
「俺はなんでも用意周到、やるときは徹底的にやるタイプでね」
「…………」
なんかよく分からないけど、
巧がちょっとだけ怖い。
なんとか平然を装いながら続きをたずねた。
「そ、それで?」
「怖かった」
「感想聞いてないんだけど」
「いや本当に怖かったんだって。俺今までも変な女に言い寄られたことあるけど群を抜いてすごかった。だから穏便に済ませたくて、もう少し飲んでからにしませんかって誘導したんだよ。んで部屋で二人飲んで、飲みまくって。つーか飲ませまくって、潰した」
「それって普通男女逆なんじゃ……」
「ほんとそれ。かなり飲ませたよ。んで潰れたところをこっそり出てきたわけだけど、それで勘違いでもしたんだろうな。なんせあの女途中からほとんど裸で飲んでたし」
「ひぇえ!」
この私にはあまりに刺激が強すぎる話だった! 脳内はぐるぐると混乱しているが、いや細かいことはどうでもいい。そう、ちゃんと真意だけ見なきゃ。
私はぐっと巧に顔を寄せて聞いた。
「じゃあ……安西さんと何もしてないの?」
「あんな見るからにやばい女としてたまるか」
私は両手で顔を覆った。
まさか、そんなオチだったなんて。じゃあ、安西さんのお腹の子は他の男の子供というわけだ。私は巧と離婚しなくていいんだ……。
こんなことなら、すぐにでも聞いておけばよかったのに。
呆然としている私の頭を、そっと巧が撫でた。
「……ごめん。不安にさせて」
「ううん、巧は悪くない。ただ、昨日安西さんの名前を聞いたら珍しく戸惑ってたから、私は勝手に真実だって思い込んじゃって」
「あの女どうみてもヤバいやつだったから、俺の結婚聞きつけて何かしてきたのかと思って。あの日以来ずっと大人しかったからもういいかと安心してたんだけど」
「そういうこと……」
はあ、と大きくため息をついた。私の頭を撫でていた手が、そっと降りて私の手を握る。
巧はじっとこちらを見て言った。
「でも、杏奈がそれでもそばにいたいって言ってくれて嬉しかった」
彼の手の力は強く、痛いと感じるほどだった。それでもその力強さが、今は嬉しい。
髪を振り乱してスウェット姿で真夜中に帰ってきてくれたのが、私は嬉しい。
「信じてほしい。嘘じゃないから。安西唯とは何もない。俺は杏奈としか結婚したくないし、もし杏奈がいなくなったら一生独身でいる」
「……信じてる」
「だから、今みたいに何か不安なことはすぐに言って。俺以外に言うな。杏奈が何をわがまま言っても、全部受け止める自信があるから」
巧はそうキッパリいって、私を抱きしめた。
熱い彼の体温が心地よく、涙を誘う。
すべて一人で抱えて考え込むのが本当に愚かなんだとよくわかった。恋愛初心者はこれだからいけない。最悪の事態になるのが怖くて一歩を踏み出すことすらできなかった。
自分に正直にいなくちゃならない。欲しいものはちゃんと欲しいって言わないと、手に入らないんだ。
「うん、ありがとう。ちゃんと言えてよかった」
涙声で答えた私を、巧はさらに強い力で抱擁する。
安心感からか、一気に眠気が襲ってきた。巧の胸の中で眠ってしまいそうなくらいふわふわした感覚でいると、突然私を離した巧が立ち上がる。
はて、と巧を見上げると、彼はとんでもなく座った目でどこかを見つめていた。やや引くほど顔が怖い。
「た、たくみ?」
「安西唯と話す。杏奈も来い」
「え、う、うん。連絡先は聞いてるけど」
「安西唯の親も呼ぶ」
「え、安西グループの社長様を……!?」
「ああでも、少しだけ待ってくれ。全てが揃うまで」
私は首をかしげた。揃う、とは?
巧は腕を組みどこか一点を見つめながら吐き捨てた。
「俺はなんでも用意周到、やるときは徹底的にやるタイプでね」
「…………」
なんかよく分からないけど、
巧がちょっとだけ怖い。