3次元お断りな私の契約結婚





 それからしばらく経った頃、安西さんたちと話し合いの場が設けられた。

 私は巧と二人、あちらは安西さんとそのご両親。どんな図ですか、おかげで緊張ガッチガチだ。

 場所は有名高級ホテルのラウンジ。今からとんでもなく修羅場な話が始まると言うのに、こんな場所でいいのだろうかと心配になった。

 巧はスーツを身にまとい、まるで仕事に行くかのような格好で準備を整えた。私もしっかり身だしなみに気をつけておく。

 二人で待ち合わせ場所に着いた頃、すでに三人は座って私たちを待っていた。安西さんはお腹が余計に大きくなったように見え、そして私の顔を見て勝ち誇ったように微笑みかけてきた。

 そんな安西さんには目もくれず、巧は飄々とした様子で三人に歩み寄り声をかけた。

「お待たせして申し訳ありません、ご無沙汰しております」

 頭を下げた巧に続いて私も続く。淡いブルーのワンピースを着ている安西さんの両脇には、やはりお金持ちそうな男女が座っていた。

 安西グループは、藤ヶ谷家とまではいかないも有名な方々だ。その出立ちからもよくわかる。身につけているのはブランド品ばかりだ。むしろお義父さん、お義母さんたちの方がもう少し近寄りやすくてフレンドリーな感じがするくらい。

 安西さんの父が、にっこりと笑った。

 普通娘を妊娠させた相手を見たら殴りかかるのが父親かと思っていた。しかも、既婚者なのに。

 不思議に思いながらも、椅子に腰掛けた巧の隣に慌てて腰掛けた。

「いやあ、久しぶりですね巧くん。お父様はお元気で?」

「ええ、おかげさまで」

「それは何より。えーと隣の方は」

「妻の杏奈です」

 私は頭を下げた。緊張で吐き出しそうなのを必死に抑える。三人からの視線が痛く感じた。

 頭を上げると、唯さんと目が合う。気まずさが極限で、私は目を逸らした。

 その光景が彼女には嬉しかったのかもしれない。満面の笑みで巧に話しかけた。
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