3次元お断りな私の契約結婚
ぐっと胸が苦しくなった。
ずっと必死に隠してきた私のトップシークレット。
引かずに受け止めてもらえるなんて、思ってなかった。
嫌な顔一つしない巧の気遣いが、嬉しい。
「引いたりなんかしないよ。俺の半ストーカー行為の方がよっぽどドン引き案件」
「あは! 半ストーカーって」
「まあ意外だとは思ったけど。誰にだって息抜きしたい時もあるし、何を好きでも自由だろ。こんなんで引くと思われてた方がショックだ」
私は笑った。そんな私をみて、巧も目を細めてみてくる。
そうか。そうなんだ。
もっと早く言えばよかったのかな。どうしても意固地になって人に言えなくなってしまっていた。でも確かに、巧がこれで引いていなくなるなんてありえないって今なら思うのに。
何て馬鹿だったんだろう、私って。
巧がしげしげとグッズたちを観察している。ほっとしてその背後から声をかけた。
「よかった……なんか、もっと早く言えばよかったのかな」
「そうだよ。この部屋を見るより『絶対ダメ』なんて断られる方がずっとショックだっつーの」
ぎくりとする。ああ、やっぱり根に持たれてた……いや確かに、あれは私が悪い。言い方ってもんがある。
「そ、その節はどうも……」
困りながらそう言って苦笑いすると、巧がこちらをふっと振り返った。そして私の目の前に歩み寄る。
彼を見上げると、嬉しそうに笑っていた。
「ま、やっと杏奈の隠し事が知れて嬉しい」
「う、うん、ごめんね」
「もうこれで隠し事はない?」
「はい、大丈夫です」
「それはよかった」
巧はそういうと、私の手を引いてすぐ隣にあるベッドに押し込んだ。やや強引な力に、私はそのまま倒れ込んでしまう。はっとして慌てて顔を上げた。
「た、たく」
「お、すげえ抱き枕。はい、今はオーウェンは床で寝ててねー」
「あ、あの、ちょっと」
いつも抱いて寝ていたオーウェンはついに床に置かれてしまった。そしてどこか意地の悪い顔をして笑う巧がベッドに足をかける。
まさか! 心の準備が! ……できてないなんて言えない、どれだけ時間があったと思ってるんだ。
それでもまさかこの部屋でそうなるとは夢にも思っておらず、私は焦りながら尋ねた。
「え、こ、この部屋集中できる!?」
「は? 男の集中力舐めんな」
「あ、えーと」
「ちょっと黙ってて。もう杏奈のペースに合わせてたらダメだってよくわかったから」
巧はそう笑って私にキスをした。自分でもわかってる、今絶対に顔が真っ赤なトマト。突然緊張が襲ってきて全身がカチカチになってしまう。
そんな私を、巧は優しい目でみた。そして言う。
「俺は絶対杏奈を裏切らないから。二度と離婚届なんか持ってくんな」
「……はい」
巧は再び私に口付けた。彼の髪が垂れて私の顔を掠める。
全てが片付いた。私はこれから先も巧の隣にいていいんだ。そう思うだけで、安心で泣いてしまいそになった。