3次元お断りな私の契約結婚
「あ、麻里ちゃんだけは知ってるんだ、この結婚について」
契約書には、別に他の人に話してはいけない、だなんて書かれてはいなかった。だが、麻里ちゃんには話しているということは巧は知らなかったはずだ。
私の言葉を聞き、彼はああと少し納得したように声を漏らした。
「そうでしたか」
「あ、もちろん他言はしてませんし……! 私は杏奈の友達というか姉みたいな立場で。安心してください、絶対に誰にも言いませんから!」
「よろしくお願いします」
巧は丁寧に頭を下げ、床に置かれていたカバンを手に取った。
「どうぞごゆっくりなさってください。今後も別にいつでも来ていただいて結構ですから。本当に、失礼をいたしました」
「い、いいえこちらこそ……」
二人は気まずそうにそう言葉を交わすと、巧はそのまま廊下を突っ切ってリビングの方へと入っていった。その背中がどこか疲れているように見えるのは気のせいだろうか。
彼がいなくなったのを目で見送ると、麻里ちゃんがはあーとため息をついた。私は笑って謝る。
「ごめんごめん、巧に麻里ちゃんがくること言ってなくて。変な誤解されちゃってたね」
「びっくりしたよお」
麻里ちゃんがフラフラと部屋の中に戻り、私のベッドにどしんと腰掛けた。力が抜けたようにそのままこてんとベッドに寝そべる。
部屋の扉を閉めた後、私は再びテレビ画面の前に腰掛けた。
「そういえば杏奈の男に興味がない、の言葉をはき違えてるんだったね、それも忘れてたから大混乱だった……」
「あーあれね。別にあえて今更訂正する必要ないかと思ってそのままにしておいたんだけどさ。こんな所で誤解生むとは思わなくて」
「てゆうかさ。思った以上にかっこよかったわー巧さん……勘違いしてたことに真っ赤になってて、むしろ人間らしくて好感持てたよ。思ってたのと全然違った」
麻里ちゃんはベッドから起き上がり、前のめりになりながら私に鼻息荒くしていう。
「一緒に住んでて本当に何も思わないの!?」
「え」
コントローラーを握ってゲームを再開しようとしていた私は驚いて麻里ちゃんを見る。至って真剣な顔で彼女は私を見ていた。
「ええ、私が三次元の男に興味ないこと知ってるじゃない」
「よーーく知ってますけど。あれはまさに二次元から飛び出してきたようないい男じゃない。惚れないなんてある?」
「二次元ならもっと性格いいはずだよ」
「そんな性格も悪い人には見えないんだけど」
納得行かなそうに麻里ちゃんは眉を下げる。まあ、いいところもある、とは思っている。腹黒いけど律儀なところもあるなあって。
……だけどさあ。私は部屋に貼られたポスターを見る。
「オーウェンと比べたら月とすっぽんで」
「そ、そりゃそこと比べたらさ……」
「それに、他の女好きな人なんてあえて好きになってどうすんのよ」
「それもそうか……愛人いるんだもんね」
しおしおと麻里ちゃんが小さくなった。多分、麻里ちゃんは私に三次元にも興味を持って欲しいと思っている。
だが残念ながら、巧はすでに他の女のものだ。戸籍上は私の夫だけど、それは形だけの婚姻関係にすぎない。
「そういうこと。まあ、いいお友達ぐらいにはなれるかもね。ほらー続きしようよー」
私が笑いながらコントローラーを差し出すと、麻里ちゃんが渋々受け取った。それはどうも、納得していない。そんな顔だった。
契約書には、別に他の人に話してはいけない、だなんて書かれてはいなかった。だが、麻里ちゃんには話しているということは巧は知らなかったはずだ。
私の言葉を聞き、彼はああと少し納得したように声を漏らした。
「そうでしたか」
「あ、もちろん他言はしてませんし……! 私は杏奈の友達というか姉みたいな立場で。安心してください、絶対に誰にも言いませんから!」
「よろしくお願いします」
巧は丁寧に頭を下げ、床に置かれていたカバンを手に取った。
「どうぞごゆっくりなさってください。今後も別にいつでも来ていただいて結構ですから。本当に、失礼をいたしました」
「い、いいえこちらこそ……」
二人は気まずそうにそう言葉を交わすと、巧はそのまま廊下を突っ切ってリビングの方へと入っていった。その背中がどこか疲れているように見えるのは気のせいだろうか。
彼がいなくなったのを目で見送ると、麻里ちゃんがはあーとため息をついた。私は笑って謝る。
「ごめんごめん、巧に麻里ちゃんがくること言ってなくて。変な誤解されちゃってたね」
「びっくりしたよお」
麻里ちゃんがフラフラと部屋の中に戻り、私のベッドにどしんと腰掛けた。力が抜けたようにそのままこてんとベッドに寝そべる。
部屋の扉を閉めた後、私は再びテレビ画面の前に腰掛けた。
「そういえば杏奈の男に興味がない、の言葉をはき違えてるんだったね、それも忘れてたから大混乱だった……」
「あーあれね。別にあえて今更訂正する必要ないかと思ってそのままにしておいたんだけどさ。こんな所で誤解生むとは思わなくて」
「てゆうかさ。思った以上にかっこよかったわー巧さん……勘違いしてたことに真っ赤になってて、むしろ人間らしくて好感持てたよ。思ってたのと全然違った」
麻里ちゃんはベッドから起き上がり、前のめりになりながら私に鼻息荒くしていう。
「一緒に住んでて本当に何も思わないの!?」
「え」
コントローラーを握ってゲームを再開しようとしていた私は驚いて麻里ちゃんを見る。至って真剣な顔で彼女は私を見ていた。
「ええ、私が三次元の男に興味ないこと知ってるじゃない」
「よーーく知ってますけど。あれはまさに二次元から飛び出してきたようないい男じゃない。惚れないなんてある?」
「二次元ならもっと性格いいはずだよ」
「そんな性格も悪い人には見えないんだけど」
納得行かなそうに麻里ちゃんは眉を下げる。まあ、いいところもある、とは思っている。腹黒いけど律儀なところもあるなあって。
……だけどさあ。私は部屋に貼られたポスターを見る。
「オーウェンと比べたら月とすっぽんで」
「そ、そりゃそこと比べたらさ……」
「それに、他の女好きな人なんてあえて好きになってどうすんのよ」
「それもそうか……愛人いるんだもんね」
しおしおと麻里ちゃんが小さくなった。多分、麻里ちゃんは私に三次元にも興味を持って欲しいと思っている。
だが残念ながら、巧はすでに他の女のものだ。戸籍上は私の夫だけど、それは形だけの婚姻関係にすぎない。
「そういうこと。まあ、いいお友達ぐらいにはなれるかもね。ほらー続きしようよー」
私が笑いながらコントローラーを差し出すと、麻里ちゃんが渋々受け取った。それはどうも、納得していない。そんな顔だった。