3次元お断りな私の契約結婚
契約内容はそうだった。お互い恋愛は自由。現に巧だって他の女と付き合い続けているんだから。
「……けるな」
「巧だって自由にし」
「ふざけるなよ」
低い声が響いてはっとした。巧を見れば、見たことない座った目で厳しく私を見ていた。あまりの顔についたじろぐ。そりゃ普段からプライベートはニコニコしてるタイプじゃないけど、それにしてもこんな表情の巧は初めて見る。
どうして、怒らせた?
「……え」
「なんで樹なんだよ」
そう怒りの声を漏らした瞬間、ただぽかんとしている私に巧の顔が近づいた。一瞬の出来事だった、彼の熱い唇が自分の唇と重なっていることに気がつく。
頭の中は真っ白だった。何がなんだか分からず、驚きで情けなくもふわりと後ろに倒れ込んでしまう。
丁度背後にあったソファに着地した瞬間、それを追うように巧が近づき、私の肩を掴んで体を背もたれに押しつけた。そして追い被さるようにして再び私に深く口付けた。されるがままその柔らかな感触を受け入れた。
待って、どうして、何がどうなってる。
ぐるぐると頭の中が回る。樹くんに押し倒された時とは全く違う。自分の混乱と戸惑いがぐちゃぐちゃだ。
自分は他に女がいるくせに、恋愛は自由だと言っているくせに、仲の悪い弟と付き合うのだけはそんなに許せないのか。その怒りをこんな形でぶつけているのか。
一気に頭が冷えた。
体が言うことを聞くようになった瞬間巧を強く突き飛ばす。彼は後ろによろけながら私から離れた。反射的に手で口元を覆う。
「ばっ……かじゃないの! 最低!」
そう叫んでようやく巧の顔が目に入る。さっきまで怒りを抑え切れないと言った顔をしていたその人は、今はなぜか視線を落として叱られた子供のような弱々しい表情をしていた。
それもまた見たことのない顔で、ぐっと言葉を飲む。なんでそっちがそんな顔してるのよ、傷ついたみたいな顔してるのよ!
もっと罵倒してやりたかったのに言葉が出なくなってしまった私は無言で立ち上がって巧の隣をすり抜けた。背後で私の名を呼ぶ声が聞こえたが無視し、足早にリビングを出ると自室へ入って鍵をかけた。
相変わらずキラキラしたスマイルをした王子たちが私を受け入れたけれど、少し前なら癒してくれたそれらは今はもう飾りにしか思えない。
ふらふらとする頭を抱えてその場にしゃがみ込んだ。
何で、何が、どうして、意味が分からない。
もはや何も考えられなくなった私の目からなぜか涙が溢れた。何で泣いているのか自分でも分からない。
ただ、たとえ好きな人からでも、私のことが好きじゃないのに落とされるキスは虚しいだけなんだと学んだ。
「……けるな」
「巧だって自由にし」
「ふざけるなよ」
低い声が響いてはっとした。巧を見れば、見たことない座った目で厳しく私を見ていた。あまりの顔についたじろぐ。そりゃ普段からプライベートはニコニコしてるタイプじゃないけど、それにしてもこんな表情の巧は初めて見る。
どうして、怒らせた?
「……え」
「なんで樹なんだよ」
そう怒りの声を漏らした瞬間、ただぽかんとしている私に巧の顔が近づいた。一瞬の出来事だった、彼の熱い唇が自分の唇と重なっていることに気がつく。
頭の中は真っ白だった。何がなんだか分からず、驚きで情けなくもふわりと後ろに倒れ込んでしまう。
丁度背後にあったソファに着地した瞬間、それを追うように巧が近づき、私の肩を掴んで体を背もたれに押しつけた。そして追い被さるようにして再び私に深く口付けた。されるがままその柔らかな感触を受け入れた。
待って、どうして、何がどうなってる。
ぐるぐると頭の中が回る。樹くんに押し倒された時とは全く違う。自分の混乱と戸惑いがぐちゃぐちゃだ。
自分は他に女がいるくせに、恋愛は自由だと言っているくせに、仲の悪い弟と付き合うのだけはそんなに許せないのか。その怒りをこんな形でぶつけているのか。
一気に頭が冷えた。
体が言うことを聞くようになった瞬間巧を強く突き飛ばす。彼は後ろによろけながら私から離れた。反射的に手で口元を覆う。
「ばっ……かじゃないの! 最低!」
そう叫んでようやく巧の顔が目に入る。さっきまで怒りを抑え切れないと言った顔をしていたその人は、今はなぜか視線を落として叱られた子供のような弱々しい表情をしていた。
それもまた見たことのない顔で、ぐっと言葉を飲む。なんでそっちがそんな顔してるのよ、傷ついたみたいな顔してるのよ!
もっと罵倒してやりたかったのに言葉が出なくなってしまった私は無言で立ち上がって巧の隣をすり抜けた。背後で私の名を呼ぶ声が聞こえたが無視し、足早にリビングを出ると自室へ入って鍵をかけた。
相変わらずキラキラしたスマイルをした王子たちが私を受け入れたけれど、少し前なら癒してくれたそれらは今はもう飾りにしか思えない。
ふらふらとする頭を抱えてその場にしゃがみ込んだ。
何で、何が、どうして、意味が分からない。
もはや何も考えられなくなった私の目からなぜか涙が溢れた。何で泣いているのか自分でも分からない。
ただ、たとえ好きな人からでも、私のことが好きじゃないのに落とされるキスは虚しいだけなんだと学んだ。