3次元お断りな私の契約結婚
ここにはいられない
流石に同じ家にはいられないと思った。
バッグに簡単に荷物を詰めて夜中にこっそり家を出た。巧と顔を合わせるかもしれない環境から離れたかった。
かといっていくあてはない。実家は荷物をまとめて帰ってきたとなれば両親は大騒ぎするだろうし、麻里ちゃんの家は離れているから仕事に通えなくなる。友達も、なあ……巧と喧嘩した理由とか聞かれたら上手く誤魔化せる自信がない。
仕方がないので安いビジネスホテルに泊まった。翌朝そこから出社し、またそこへ帰宅した。
正直これから先どうするのか見当もつかない。巧は連絡なんてしてこないし、私だってする余裕はない。婚姻関係を終えるとしてもあまりに早すぎて親が卒倒しそうなので避けたいと思った。
部屋を借りようか。別居、って形。
それしか思い浮かばなかった。仕事終わりに不動産屋へ駆け込み条件に合った部屋を探す。流石に毎日ホテル泊まりは出費が痛いので急いだがそう簡単に部屋が見つかるわけもなく、うなだれながら味気ないホテルへと戻る。
困ったぞと一人ベッドで寝そべりながら携帯で部屋を見ていた時、樹くんから電話がかかってきた。
そういえばあの日の夜も掛けてきてくれたんだっけ。
思い出して憂鬱に陥る。あの馬鹿男の考えていることが今でもまるで分からない。
「はい」
私は気分を切り替えて電話に出た。耳元で樹くんの声が聞こえる。
『あ! 杏奈ちゃん、よかった!』
「この前も電話貰ってたのに出れなくてごめんなさい」
『それは全然構わないけど! あれから大丈夫かなって心配になって』
巧の言うように私がお気楽でなければ、樹くんはやっぱりそんなに悪い子には思えないと考える。そりゃ最初はかなりやりすぎたけど……。
むしろ巧とどうしてあんなに仲が悪いのか不思議なほどだ。樹くんなら兄弟に懐いていそうなのに。
「ええと、うん大丈夫だよありがとう」
『離婚とかしちゃうの?』
「ううん今のところは」
『今のところ?』
「ま、まだ様子見してるの!」
『ふうん、巧のマンションに帰ってないもんね』
突然放たれた言葉につい息を呑んだ。
「な、何で知ってるの?」
『あ、本当にそうなの? ごめんカマかけただけ。もしかしたらそうなのかなあって。杏奈ちゃん意外と引っかかりやすいんだね』
ベッドに倒れ込んだ。この前から思ってたけど樹くんって意外と鋭いし頭が回る! 年下の男の子に振り回されている自分に辟易しながら言った。
「やめてよもう……」
『今どこにいるの? ちょっと会えない? あーもちろん人が沢山いるようなカフェとかでいいから』
「…………」
むくりと起き上がる。ホテルの窓から見える街並みを見渡した。
「ビジネスホテルに泊まってるけど、心配してくれてるなら本当に大丈夫だから」
『下心ないよ?』
ストレートな言い方につい笑う。それ、下心ある時に使うやつ。
「別にそんなこと考えてるわけじゃない。でも、……巧が嫌がるから」
苦笑しながら言った。
結局はね、そこ。あんな最低な男だけど、やっぱり彼を裏切りたくはない。
バッグに簡単に荷物を詰めて夜中にこっそり家を出た。巧と顔を合わせるかもしれない環境から離れたかった。
かといっていくあてはない。実家は荷物をまとめて帰ってきたとなれば両親は大騒ぎするだろうし、麻里ちゃんの家は離れているから仕事に通えなくなる。友達も、なあ……巧と喧嘩した理由とか聞かれたら上手く誤魔化せる自信がない。
仕方がないので安いビジネスホテルに泊まった。翌朝そこから出社し、またそこへ帰宅した。
正直これから先どうするのか見当もつかない。巧は連絡なんてしてこないし、私だってする余裕はない。婚姻関係を終えるとしてもあまりに早すぎて親が卒倒しそうなので避けたいと思った。
部屋を借りようか。別居、って形。
それしか思い浮かばなかった。仕事終わりに不動産屋へ駆け込み条件に合った部屋を探す。流石に毎日ホテル泊まりは出費が痛いので急いだがそう簡単に部屋が見つかるわけもなく、うなだれながら味気ないホテルへと戻る。
困ったぞと一人ベッドで寝そべりながら携帯で部屋を見ていた時、樹くんから電話がかかってきた。
そういえばあの日の夜も掛けてきてくれたんだっけ。
思い出して憂鬱に陥る。あの馬鹿男の考えていることが今でもまるで分からない。
「はい」
私は気分を切り替えて電話に出た。耳元で樹くんの声が聞こえる。
『あ! 杏奈ちゃん、よかった!』
「この前も電話貰ってたのに出れなくてごめんなさい」
『それは全然構わないけど! あれから大丈夫かなって心配になって』
巧の言うように私がお気楽でなければ、樹くんはやっぱりそんなに悪い子には思えないと考える。そりゃ最初はかなりやりすぎたけど……。
むしろ巧とどうしてあんなに仲が悪いのか不思議なほどだ。樹くんなら兄弟に懐いていそうなのに。
「ええと、うん大丈夫だよありがとう」
『離婚とかしちゃうの?』
「ううん今のところは」
『今のところ?』
「ま、まだ様子見してるの!」
『ふうん、巧のマンションに帰ってないもんね』
突然放たれた言葉につい息を呑んだ。
「な、何で知ってるの?」
『あ、本当にそうなの? ごめんカマかけただけ。もしかしたらそうなのかなあって。杏奈ちゃん意外と引っかかりやすいんだね』
ベッドに倒れ込んだ。この前から思ってたけど樹くんって意外と鋭いし頭が回る! 年下の男の子に振り回されている自分に辟易しながら言った。
「やめてよもう……」
『今どこにいるの? ちょっと会えない? あーもちろん人が沢山いるようなカフェとかでいいから』
「…………」
むくりと起き上がる。ホテルの窓から見える街並みを見渡した。
「ビジネスホテルに泊まってるけど、心配してくれてるなら本当に大丈夫だから」
『下心ないよ?』
ストレートな言い方につい笑う。それ、下心ある時に使うやつ。
「別にそんなこと考えてるわけじゃない。でも、……巧が嫌がるから」
苦笑しながら言った。
結局はね、そこ。あんな最低な男だけど、やっぱり彼を裏切りたくはない。