3次元お断りな私の契約結婚
「そこも契約に加えておいてください。下手に逆恨みされて揉め事はごめんなので」
淡々と言い放った私の言葉に、彼は少し面食らったような顔で苦笑した。
「冷静ですね。噂以上に冷静沈着な方でいらっしゃるようで」
「ええ、こういう時こそ冷静でいなくては。契約はお互いの理解と納得があってこそです。不利益なものは契約いたしません」
ニッコリ笑って言った私に、彼は小声で笑う。
「素晴らしい。やはりあなたに声をかけて正解だった」
藤ヶ谷さんはふう、と一度息を吐くと、再び余裕のある笑みを浮かべて断言した。
「決して後悔はさせません。どうぞよろしくお願いします、私の奥さん」
とりあえずその日は連絡先だけ交換して私たちは別れた。
普段と変わらぬテンションで仕事をこなし家に帰り、一人暮らしのやや散らかった部屋に入り電気をつける。オーウェンのポスターにフィギュア、抱き枕。私のオアシスとも言える場所だ。
「あーオーウェンただいま〜フリードリヒ、ロータスもただいま〜!」
オーウェン以外にも推しはいる。彼が一番だけど、二次元は色んな人を好きになっていいのもいいところ。三次元じゃこうはいかない。
持っていた鞄を放り投げて一旦その場に座り込む。今日も忙しかった、疲れた。帰宅した安心感ではあーと大きなため息を吐いた瞬間、ふと自分の頭が冷えた。
……今更だけど、私なんであんな誘いに即答したんだ??
あの後も仕事が忙しくてゆっくり考える暇もなかったが、冷静になってみればなんて判断を下したんだろう自分は。正気を失っていたのか。まともじゃないプロポーズを受けてしまった。何が冷静に、だ。今思うと全然冷静じゃなかっただろうに。
「いや、やばいな、今更ながら大丈夫かな」
腕を組んで一人大きな声で言う。
藤ヶ谷巧さん、噂によればかなり気難しい人だと聞いている。他人にも自分にも厳しく、仕事上下さねばならない少々過酷な判断も、彼は気に負うことなく即決するとか。
まあ少しして離婚すればいいやとおもってたけど、それまでルームシェアするんだしなぁ……やっぱりもう少しちゃんと考えた方がいいのでは?
今更そんな当たり前なことを思った自分は、先程放り投げた鞄を手に取り中から携帯を取り出す。藤ヶ谷さんに連絡しようと思ったのだ。
が、そこにはすでに一通のメッセージが届いていた。
「……もしやの?」
慌ててそれを開く。想像通り、送り主は藤ヶ谷さんだった。
もしかしたら向こうも今更冷静になったのかも、なんて期待を抱く。
『購入しておきました』
そんな短い文章に、画像が何枚か添付されている。
「……うわぁっ!!」
持っていた携帯を落としそうになる。
マンションだった。
外観、内装に間取り図が送られてきている。4LDKの高級マンションだ。立地も環境も申し分ない。
「購入しておきましたて!! トイレットペーパーのストックか!」
大声で返事のないツッコミをした。一般家庭に育った自分としては感覚の違いに震えを覚える。さすがは藤ヶ谷グループ副社長だ、半日足らずで普通高級マンションの購入即決するかな?
というかこれ、もう引き下がれないパターンなのでは……!
あわあわと慌てているところに、またしても藤ヶ谷さんからメッセージが届いた。ぎくりと携帯を見つめる。嫌な予感がする。
恐る恐るそれを覗き込むと、今度はこう書かれていた。
『両親には話しました、非常に喜んでいます。
両親へ紹介する日程を決めましょう、15日などどうですか』
淡々と言い放った私の言葉に、彼は少し面食らったような顔で苦笑した。
「冷静ですね。噂以上に冷静沈着な方でいらっしゃるようで」
「ええ、こういう時こそ冷静でいなくては。契約はお互いの理解と納得があってこそです。不利益なものは契約いたしません」
ニッコリ笑って言った私に、彼は小声で笑う。
「素晴らしい。やはりあなたに声をかけて正解だった」
藤ヶ谷さんはふう、と一度息を吐くと、再び余裕のある笑みを浮かべて断言した。
「決して後悔はさせません。どうぞよろしくお願いします、私の奥さん」
とりあえずその日は連絡先だけ交換して私たちは別れた。
普段と変わらぬテンションで仕事をこなし家に帰り、一人暮らしのやや散らかった部屋に入り電気をつける。オーウェンのポスターにフィギュア、抱き枕。私のオアシスとも言える場所だ。
「あーオーウェンただいま〜フリードリヒ、ロータスもただいま〜!」
オーウェン以外にも推しはいる。彼が一番だけど、二次元は色んな人を好きになっていいのもいいところ。三次元じゃこうはいかない。
持っていた鞄を放り投げて一旦その場に座り込む。今日も忙しかった、疲れた。帰宅した安心感ではあーと大きなため息を吐いた瞬間、ふと自分の頭が冷えた。
……今更だけど、私なんであんな誘いに即答したんだ??
あの後も仕事が忙しくてゆっくり考える暇もなかったが、冷静になってみればなんて判断を下したんだろう自分は。正気を失っていたのか。まともじゃないプロポーズを受けてしまった。何が冷静に、だ。今思うと全然冷静じゃなかっただろうに。
「いや、やばいな、今更ながら大丈夫かな」
腕を組んで一人大きな声で言う。
藤ヶ谷巧さん、噂によればかなり気難しい人だと聞いている。他人にも自分にも厳しく、仕事上下さねばならない少々過酷な判断も、彼は気に負うことなく即決するとか。
まあ少しして離婚すればいいやとおもってたけど、それまでルームシェアするんだしなぁ……やっぱりもう少しちゃんと考えた方がいいのでは?
今更そんな当たり前なことを思った自分は、先程放り投げた鞄を手に取り中から携帯を取り出す。藤ヶ谷さんに連絡しようと思ったのだ。
が、そこにはすでに一通のメッセージが届いていた。
「……もしやの?」
慌ててそれを開く。想像通り、送り主は藤ヶ谷さんだった。
もしかしたら向こうも今更冷静になったのかも、なんて期待を抱く。
『購入しておきました』
そんな短い文章に、画像が何枚か添付されている。
「……うわぁっ!!」
持っていた携帯を落としそうになる。
マンションだった。
外観、内装に間取り図が送られてきている。4LDKの高級マンションだ。立地も環境も申し分ない。
「購入しておきましたて!! トイレットペーパーのストックか!」
大声で返事のないツッコミをした。一般家庭に育った自分としては感覚の違いに震えを覚える。さすがは藤ヶ谷グループ副社長だ、半日足らずで普通高級マンションの購入即決するかな?
というかこれ、もう引き下がれないパターンなのでは……!
あわあわと慌てているところに、またしても藤ヶ谷さんからメッセージが届いた。ぎくりと携帯を見つめる。嫌な予感がする。
恐る恐るそれを覗き込むと、今度はこう書かれていた。
『両親には話しました、非常に喜んでいます。
両親へ紹介する日程を決めましょう、15日などどうですか』