3次元お断りな私の契約結婚
電話口からため息が聞こえてきた。
『健気だねえ。ねえ巧の何がいいの? 性格悪いじゃん』
「同感だね」
『頭いいけどずる賢さもあるっていうかさ』
「超同感だね」
『はは、同感してるよ』
つられて笑う。樹くんがいうことよーく分かるよ。私だって分からない、オーウェンと比べたら月とスッポンなのにね。
「でも樹くん、巧が付き合ってた女の人にちょっかいかけるのはいつもだって聞いたよ。何でそんなことするの」
思ってたより悪い子じゃないと思うけど、私にだって最初そうだった。ちょっと軽率というか、悪ふざけがすぎる子なんだな。
彼は拗ねたようにいう。
『そんなこと聞いたの? まあ事実なんだけどさー……最初は嫌な兄の彼女どんな子だろうって近づいてみただけなんだけど。しかしあの巧って男はね、杏奈ちゃん以外はほんと女見る目なくてね。みんな俺がちょっかいかけてまんざらでもなそうにしてた』
「わお」
『彼氏の弟に手出されて喜んでるような女ばっかりだったよ。あいつ女運ないよね』
「そうだったの、意外だ……」
『多分言い寄ってきた女適当に選んでたんだと思うけど。でも最後結局いい奥さん捕まえたからずるいよあいつは』
最初、確かに言っていたな。シングルマザー以外の女性とも沢山会ったけど結局ダメだったって。
つまりは好きでもないのに付き合ってみたんだろうな。でも無理だった、と。
……それだけ忘れられない女の人に、敵うわけないよなあ。
『まあとりあえず会うのは諦めた。でも一人で外泊繰り返すのも危ないから何とかしなよ。俺みたいなのに押し倒されるよ』
「あは! ありがと。樹くんって本当はいい子だよね、お調子者だけど」
『……いい子なんて初めて言われたよ』
困ったように呟いた彼に微笑む。ああ、本当に弟みたいに思ってきちゃった。
「電話、本当にありがとうね。また機会があればみんなで食事でも行きましょう」
『はいはい、みんなでね。おやすみなさーい』
電話を切ったあと、ベッドにごろりと寝そべった。いつも使っている感触とは違うので違和感を感じる。
充電が残りわずかになった携帯を翳して見つめた。
「樹くんだって心配して電話くれるのに……あいつは何も言ってこないんか」
散々好き勝手したくせに。
ごろりと寝返りを打って目を閉じる。
これからどうしよう。もう巧とは会わないまま別居して婚姻関係を終えるんだろうか。でもそれが最善のような気もしてきた、叶わぬ恋を抱いて一緒に暮らすのは流石に辛い。
「明日は部屋を探すぞ」
そう強く決意して、私は目を閉じた。
『健気だねえ。ねえ巧の何がいいの? 性格悪いじゃん』
「同感だね」
『頭いいけどずる賢さもあるっていうかさ』
「超同感だね」
『はは、同感してるよ』
つられて笑う。樹くんがいうことよーく分かるよ。私だって分からない、オーウェンと比べたら月とスッポンなのにね。
「でも樹くん、巧が付き合ってた女の人にちょっかいかけるのはいつもだって聞いたよ。何でそんなことするの」
思ってたより悪い子じゃないと思うけど、私にだって最初そうだった。ちょっと軽率というか、悪ふざけがすぎる子なんだな。
彼は拗ねたようにいう。
『そんなこと聞いたの? まあ事実なんだけどさー……最初は嫌な兄の彼女どんな子だろうって近づいてみただけなんだけど。しかしあの巧って男はね、杏奈ちゃん以外はほんと女見る目なくてね。みんな俺がちょっかいかけてまんざらでもなそうにしてた』
「わお」
『彼氏の弟に手出されて喜んでるような女ばっかりだったよ。あいつ女運ないよね』
「そうだったの、意外だ……」
『多分言い寄ってきた女適当に選んでたんだと思うけど。でも最後結局いい奥さん捕まえたからずるいよあいつは』
最初、確かに言っていたな。シングルマザー以外の女性とも沢山会ったけど結局ダメだったって。
つまりは好きでもないのに付き合ってみたんだろうな。でも無理だった、と。
……それだけ忘れられない女の人に、敵うわけないよなあ。
『まあとりあえず会うのは諦めた。でも一人で外泊繰り返すのも危ないから何とかしなよ。俺みたいなのに押し倒されるよ』
「あは! ありがと。樹くんって本当はいい子だよね、お調子者だけど」
『……いい子なんて初めて言われたよ』
困ったように呟いた彼に微笑む。ああ、本当に弟みたいに思ってきちゃった。
「電話、本当にありがとうね。また機会があればみんなで食事でも行きましょう」
『はいはい、みんなでね。おやすみなさーい』
電話を切ったあと、ベッドにごろりと寝そべった。いつも使っている感触とは違うので違和感を感じる。
充電が残りわずかになった携帯を翳して見つめた。
「樹くんだって心配して電話くれるのに……あいつは何も言ってこないんか」
散々好き勝手したくせに。
ごろりと寝返りを打って目を閉じる。
これからどうしよう。もう巧とは会わないまま別居して婚姻関係を終えるんだろうか。でもそれが最善のような気もしてきた、叶わぬ恋を抱いて一緒に暮らすのは流石に辛い。
「明日は部屋を探すぞ」
そう強く決意して、私は目を閉じた。