3次元お断りな私の契約結婚
笑顔で巧を見つめる私を、彼はただ茫然として眺めていた。肝心なところで判断力ない奴!
「……杏奈、だってお前樹を」
「そんなの巧の思い込みだよ、ホテルの前で巧を見てショック受けてた私を励ましてくれてただけだし……あの時、本当に悲しかったから」
「悲しかった、って」
「出て行かないよ。私は巧には他に好きな人がいるんだって思ってたから辛かったわけで……変な嘘つかないでよね馬鹿! ややこしくなったじゃん!」
私がそう言い終わったと同時に、巧が突然力強く私を抱きしめた。その勢いに体が後ろに倒れそうになるのをなんとか踏ん張る。苦しいほどの力に一瞬戸惑いつつも、あの日巧の胸で泣いたことを思い出した。彼からは何だか懐かしい匂いがする。
巧の背は私よりゆうに高い。肩幅もずっと広い。そんな今まで体験したことのない男性の抱擁に、すっかり心奪われる。心臓が馬鹿みたいに騒いでいる。
巧はそっと私を離すと、どこか余裕のなさそうな顔で私を見ながら呟いた。
「……杏奈、悪いけどめちゃくちゃ好きなんだ。
付き合ってくれるかな」
それを聞いた途端、私はぶはっと吹き出した。最後の決め台詞のはずなのに完全にツボに入ってしまった。
巧は眉を下げて不機嫌そうな顔になる。
「何で笑うんだよ」
「だ、だって……! 付き合うって! 私たち、結婚してるんだよ!」
ケラケラ笑いながら言うと、巧もつられて笑った。笑うとできる目尻の皺が優しい。
「それもそうだった」
「もう、順番めちゃくちゃ……! お腹痛い!」
「それにしてもムードのない女だよお前は」
ひとしきり笑った私は息を落ち着かせた。巧の顔を見上げて返事する。
「うん、そうだね。そこから始めよう」
それを聞いて巧はまた優しく笑った。結婚してるくせに今日から交際スタートだなんて、ほんとイレギュラーすぎ。
それでも嘘で固められた壁をようやく壊して彼の気持ちが聞けた今日のことを、私は絶対に忘れないと思った。
好きな人に好きだと言ってもらえる喜びは恋愛ゲームでは味わえない幸福感だとしれたんだから。
私たちの変わった関係はやっと今日からスタートする。
「……杏奈、だってお前樹を」
「そんなの巧の思い込みだよ、ホテルの前で巧を見てショック受けてた私を励ましてくれてただけだし……あの時、本当に悲しかったから」
「悲しかった、って」
「出て行かないよ。私は巧には他に好きな人がいるんだって思ってたから辛かったわけで……変な嘘つかないでよね馬鹿! ややこしくなったじゃん!」
私がそう言い終わったと同時に、巧が突然力強く私を抱きしめた。その勢いに体が後ろに倒れそうになるのをなんとか踏ん張る。苦しいほどの力に一瞬戸惑いつつも、あの日巧の胸で泣いたことを思い出した。彼からは何だか懐かしい匂いがする。
巧の背は私よりゆうに高い。肩幅もずっと広い。そんな今まで体験したことのない男性の抱擁に、すっかり心奪われる。心臓が馬鹿みたいに騒いでいる。
巧はそっと私を離すと、どこか余裕のなさそうな顔で私を見ながら呟いた。
「……杏奈、悪いけどめちゃくちゃ好きなんだ。
付き合ってくれるかな」
それを聞いた途端、私はぶはっと吹き出した。最後の決め台詞のはずなのに完全にツボに入ってしまった。
巧は眉を下げて不機嫌そうな顔になる。
「何で笑うんだよ」
「だ、だって……! 付き合うって! 私たち、結婚してるんだよ!」
ケラケラ笑いながら言うと、巧もつられて笑った。笑うとできる目尻の皺が優しい。
「それもそうだった」
「もう、順番めちゃくちゃ……! お腹痛い!」
「それにしてもムードのない女だよお前は」
ひとしきり笑った私は息を落ち着かせた。巧の顔を見上げて返事する。
「うん、そうだね。そこから始めよう」
それを聞いて巧はまた優しく笑った。結婚してるくせに今日から交際スタートだなんて、ほんとイレギュラーすぎ。
それでも嘘で固められた壁をようやく壊して彼の気持ちが聞けた今日のことを、私は絶対に忘れないと思った。
好きな人に好きだと言ってもらえる喜びは恋愛ゲームでは味わえない幸福感だとしれたんだから。
私たちの変わった関係はやっと今日からスタートする。