3次元お断りな私の契約結婚
「おはよ」
扉を開けると、巧はもう起きていた。ソファに座って優雅にコーヒーを飲みながらテレビを見ている。平日夜遅いし土曜日くらいゆっくり寝てればいいのに。私より早いって。
「お、はよ。早いね」
「普通だろ」
そう答える巧声は至って普段通りだった。なんとなくそれにほっとする。自分の中で張っていた緊張がややほぐれる。
「朝ご飯食べた?」
「まだ」
「あ、昨日のご飯余ってた。卵かけご飯にしよう」
「お前さ……いやいいけど」
巧は呆れたように言った後小さく笑った。そんなどうでもいいシーンなのに、なぜか私はどきりと緊張した。それを隠すように慌ててキッチンに入っていく。
「巧もいる? 卵かけごはん」
「もらう」
「流石にもう一品欲しいよねえ〜ほうれん草でも茹でるか」
冷蔵庫を開けて独り言を言いながら野菜を取り出した。さっさとお湯を沸かしてすぐに茹で、絞ってカットする。醤油とかつおぶしでよし!
「完成ー私ほうれん草好きなんだよねー」
ご飯をよそって卵も準びすると、いつのまに来ていたのかダイニングテーブルに座っている巧がいた。私は上機嫌で運ぶ。
「ありがとう」
「あー美味しそう! いただきます!」
卵かけご飯にほうれん草茹でただけ。いつもと変わり映えしない朝食だった。むしろ平日はパンだけを齧っているから普段より豪華かもね。
私が早速箸を持って食べ始めると、その様子をなにやら面白そうに見てくる男がいた。巧は何が面白いのか、小さく笑いながら私を見ている。
「え、なに」
「いや、なんでも」
「いやめちゃくちゃ笑ってるじゃん」
「杏奈。今日出掛けるぞ」
突然発せられた言葉に面食らった。ほうれん草が喉に詰まりそうになる。
「え、何!? どこに!」
「どこ行くかな。行きたいところあるか?」
「へ!? え、えええ、ええ……」
しおしおとしぼんで小さくなった。せっかく普段のテンションが戻ってきたところで、再び混乱の世界へ陥る。
つまりはだ。デートというやつだ。この人生無縁だったもの。画面の中ではこなしまくったデート。妄想の中ではしまくったデート。
困って視線を泳がせる。巧とは出かけた事はあるけど、それはおばあちゃんのお見舞いとかだったし……
「え、映画、とか……?」
「いいよ。何見たいの」
「え! し、調べてみる」
とりあえず無難な映画をあげてみた。それくらいしか浮かばなかった。別に見たいものがあるわけじゃあない。
扉を開けると、巧はもう起きていた。ソファに座って優雅にコーヒーを飲みながらテレビを見ている。平日夜遅いし土曜日くらいゆっくり寝てればいいのに。私より早いって。
「お、はよ。早いね」
「普通だろ」
そう答える巧声は至って普段通りだった。なんとなくそれにほっとする。自分の中で張っていた緊張がややほぐれる。
「朝ご飯食べた?」
「まだ」
「あ、昨日のご飯余ってた。卵かけご飯にしよう」
「お前さ……いやいいけど」
巧は呆れたように言った後小さく笑った。そんなどうでもいいシーンなのに、なぜか私はどきりと緊張した。それを隠すように慌ててキッチンに入っていく。
「巧もいる? 卵かけごはん」
「もらう」
「流石にもう一品欲しいよねえ〜ほうれん草でも茹でるか」
冷蔵庫を開けて独り言を言いながら野菜を取り出した。さっさとお湯を沸かしてすぐに茹で、絞ってカットする。醤油とかつおぶしでよし!
「完成ー私ほうれん草好きなんだよねー」
ご飯をよそって卵も準びすると、いつのまに来ていたのかダイニングテーブルに座っている巧がいた。私は上機嫌で運ぶ。
「ありがとう」
「あー美味しそう! いただきます!」
卵かけご飯にほうれん草茹でただけ。いつもと変わり映えしない朝食だった。むしろ平日はパンだけを齧っているから普段より豪華かもね。
私が早速箸を持って食べ始めると、その様子をなにやら面白そうに見てくる男がいた。巧は何が面白いのか、小さく笑いながら私を見ている。
「え、なに」
「いや、なんでも」
「いやめちゃくちゃ笑ってるじゃん」
「杏奈。今日出掛けるぞ」
突然発せられた言葉に面食らった。ほうれん草が喉に詰まりそうになる。
「え、何!? どこに!」
「どこ行くかな。行きたいところあるか?」
「へ!? え、えええ、ええ……」
しおしおとしぼんで小さくなった。せっかく普段のテンションが戻ってきたところで、再び混乱の世界へ陥る。
つまりはだ。デートというやつだ。この人生無縁だったもの。画面の中ではこなしまくったデート。妄想の中ではしまくったデート。
困って視線を泳がせる。巧とは出かけた事はあるけど、それはおばあちゃんのお見舞いとかだったし……
「え、映画、とか……?」
「いいよ。何見たいの」
「え! し、調べてみる」
とりあえず無難な映画をあげてみた。それくらいしか浮かばなかった。別に見たいものがあるわけじゃあない。