3次元お断りな私の契約結婚
「なんで父さんと母さんまでいるんだ」
はっとして振り返る。私以上に汗だくになっている巧が立っていた。いつもピシッとしているスーツもやや乱れている。
「巧……!」
「まーたいらないやつが来ちゃったよー杏奈ちゃんと二人きりはどこにいったやら」
隣の樹くんが顔を歪めて言った。反対に、義両親は嬉しそうに笑う。家族みんなで食事をするということが貴重なんだろうと思った。
「巧! お前よくこんな早く来れたな」
「杏奈から連絡もらって……まあ、残った分の仕事は明日朝行ってやろうと思ってる。というか父さん上がるの早すぎだ」
「わはは、すまんなあ。ほら座れ座れ。明日朝私も仕事に付き合うから」
巧が私の隣に腰掛ける。額にかいた汗がまぶしい。もしやまだ樹くんのことを心配していてこんなに急いでくれたんだろうか。
どこか嬉しさを噛み締めながら巧にメニューを手渡す。ソフトドリンクを注文し、彼はようやく一息ついた。
お義母さんが前のめりになって言った。
「今ね、杏奈さんと新婚旅行の話してたのよ〜まだもう少し先になっちゃうと思うけどね。予約は早くしたほうがいいわよって」
「ああ……まあ、式もまだしばらく先になるし、ゆっくり考えつつな」
巧はサラリと交わす。あっさりとした返答にどこか不満げなお義母さんが、あっと思い出したように言った。
「ねえ! 今度この人と温泉に行こうと思ってるの、よかったら巧たちも来なさいな! たまには杏奈ちゃんゆっくりさせてあげなさい!」
ギョッとしてお義母さんを二度見した。気づいていないのかそれでも続ける。
「ちょっと息抜きに、プチ新婚旅行! どう?」
「いや、仕事休めないし」
「温泉なら一泊二日でもいいじゃない、土日でいけるわよ。ねえ杏奈さん?」
振られてしまった。ぐっと言葉に困る。きっと普通の夫婦なら、喜んで妻は温泉に賛成するだろう。断る理由なんかない。でもここで賛成するわけには……!
巧が困ったように言う。
「義実家と一緒の旅行じゃ杏奈も休めないだろ」
「やあねえ、一緒にって言ったけど、もちろん別行動よ。私たちそんな野暮なことしないわ。あ、子供は結婚式までは我慢しなさいね」
「ぶっ!!」
烏龍茶を口から噴き出してしまったのは私だった。いやそうだ、温泉なんか一緒に行ったら巧と同じ部屋になる! それはつまり、
そういうことでは……!?
「母さん、そういう話は別に口に出さなくていいから」
樹くんが呆れたように言った。私は慌てておしぼりでテーブルを拭く。胸がドキドキしてしまってどうしようもない。
はっとして振り返る。私以上に汗だくになっている巧が立っていた。いつもピシッとしているスーツもやや乱れている。
「巧……!」
「まーたいらないやつが来ちゃったよー杏奈ちゃんと二人きりはどこにいったやら」
隣の樹くんが顔を歪めて言った。反対に、義両親は嬉しそうに笑う。家族みんなで食事をするということが貴重なんだろうと思った。
「巧! お前よくこんな早く来れたな」
「杏奈から連絡もらって……まあ、残った分の仕事は明日朝行ってやろうと思ってる。というか父さん上がるの早すぎだ」
「わはは、すまんなあ。ほら座れ座れ。明日朝私も仕事に付き合うから」
巧が私の隣に腰掛ける。額にかいた汗がまぶしい。もしやまだ樹くんのことを心配していてこんなに急いでくれたんだろうか。
どこか嬉しさを噛み締めながら巧にメニューを手渡す。ソフトドリンクを注文し、彼はようやく一息ついた。
お義母さんが前のめりになって言った。
「今ね、杏奈さんと新婚旅行の話してたのよ〜まだもう少し先になっちゃうと思うけどね。予約は早くしたほうがいいわよって」
「ああ……まあ、式もまだしばらく先になるし、ゆっくり考えつつな」
巧はサラリと交わす。あっさりとした返答にどこか不満げなお義母さんが、あっと思い出したように言った。
「ねえ! 今度この人と温泉に行こうと思ってるの、よかったら巧たちも来なさいな! たまには杏奈ちゃんゆっくりさせてあげなさい!」
ギョッとしてお義母さんを二度見した。気づいていないのかそれでも続ける。
「ちょっと息抜きに、プチ新婚旅行! どう?」
「いや、仕事休めないし」
「温泉なら一泊二日でもいいじゃない、土日でいけるわよ。ねえ杏奈さん?」
振られてしまった。ぐっと言葉に困る。きっと普通の夫婦なら、喜んで妻は温泉に賛成するだろう。断る理由なんかない。でもここで賛成するわけには……!
巧が困ったように言う。
「義実家と一緒の旅行じゃ杏奈も休めないだろ」
「やあねえ、一緒にって言ったけど、もちろん別行動よ。私たちそんな野暮なことしないわ。あ、子供は結婚式までは我慢しなさいね」
「ぶっ!!」
烏龍茶を口から噴き出してしまったのは私だった。いやそうだ、温泉なんか一緒に行ったら巧と同じ部屋になる! それはつまり、
そういうことでは……!?
「母さん、そういう話は別に口に出さなくていいから」
樹くんが呆れたように言った。私は慌てておしぼりでテーブルを拭く。胸がドキドキしてしまってどうしようもない。