3次元お断りな私の契約結婚
「ほ、ほら、温泉来たらお風呂たくさん入らなきゃ損みたいな感じあるじゃない!? 大浴場は閉まっちゃうから……!」
「まあ、そうだな」
私の言い訳も聞いてるのかいないのか、巧は短くそれだけ返事をしてくるりと背を向けてしまった。それを追いかける気にもなれず、私はそのまま意味もなく露天風呂を見つめた。
「はあ〜…………」
いつもとどこか違う。同じ部屋にいるだけなのに、私も巧もどこかよそよそしい空気なのを流石に感じている。
一応夫婦なんだけどなあ。温泉にきただけでこんなにガチガチに緊張してる夫婦なんかいないよね。
お風呂の戸を閉めて部屋に戻ろうとした時、鏡に自分の顔が映り込んだ。そこにはやっぱり、頬を引き攣らせて困り果てている自分の顔がある。
こんなんじゃだめだ。リラックスしないと。夕飯は義両親たちと一緒に食べることになってるし、ちゃんと妻を演じなきゃ。
私は鏡に向かって笑顔を向けて練習する。大丈夫、ビジネススマイルは得意のはずでしょう!
背筋を伸ばして平然とした顔で部屋に戻る。巧はすでに座り込んで机の上にあるお茶菓子を漁っていた。
「夕飯はお義父さんたちの部屋で食べるんだよね」
「ああ、十八時から」
「じゃあ私早速大浴場行ってこようかなあ。温泉楽しみ、美肌の湯!」
「女は風呂好きだよな、俺は他のジジイと風呂に入るなんて趣味じゃないから苦手だ」
「言い方!」
笑いながら置いてあったバッグを引き寄せて中身を漁る。ええと、着替えの下着を……
奥底にしまってあった小さな袋を見つけた。持ち運びのために下着を袋にしまっておいたのだ。
それを取り出した時、ふと、そういえば巧と暮らし始めた最初の頃は干してある下着を見られたけど笑ってどうでもいいと思っていたことを思い出す。巧だけが困ったような顔をしていた。
でもなぜか今はそれができない。彼の前で堂々と下着を運ぶ勇気はなかった。これは自分が成長した証拠なのかなあ、なんて。
「杏奈、俺も少ししたら行くけど多分こっちのが早いから鍵俺が持っておくな」
「え、あ、うんよろしく!!」
「のぼせるなよ」
巧はそういいながらお茶菓子を頬張った。そのリラックスしてる姿がなんだかおかしくて、私は笑いながら部屋を出た。
「まあ、そうだな」
私の言い訳も聞いてるのかいないのか、巧は短くそれだけ返事をしてくるりと背を向けてしまった。それを追いかける気にもなれず、私はそのまま意味もなく露天風呂を見つめた。
「はあ〜…………」
いつもとどこか違う。同じ部屋にいるだけなのに、私も巧もどこかよそよそしい空気なのを流石に感じている。
一応夫婦なんだけどなあ。温泉にきただけでこんなにガチガチに緊張してる夫婦なんかいないよね。
お風呂の戸を閉めて部屋に戻ろうとした時、鏡に自分の顔が映り込んだ。そこにはやっぱり、頬を引き攣らせて困り果てている自分の顔がある。
こんなんじゃだめだ。リラックスしないと。夕飯は義両親たちと一緒に食べることになってるし、ちゃんと妻を演じなきゃ。
私は鏡に向かって笑顔を向けて練習する。大丈夫、ビジネススマイルは得意のはずでしょう!
背筋を伸ばして平然とした顔で部屋に戻る。巧はすでに座り込んで机の上にあるお茶菓子を漁っていた。
「夕飯はお義父さんたちの部屋で食べるんだよね」
「ああ、十八時から」
「じゃあ私早速大浴場行ってこようかなあ。温泉楽しみ、美肌の湯!」
「女は風呂好きだよな、俺は他のジジイと風呂に入るなんて趣味じゃないから苦手だ」
「言い方!」
笑いながら置いてあったバッグを引き寄せて中身を漁る。ええと、着替えの下着を……
奥底にしまってあった小さな袋を見つけた。持ち運びのために下着を袋にしまっておいたのだ。
それを取り出した時、ふと、そういえば巧と暮らし始めた最初の頃は干してある下着を見られたけど笑ってどうでもいいと思っていたことを思い出す。巧だけが困ったような顔をしていた。
でもなぜか今はそれができない。彼の前で堂々と下着を運ぶ勇気はなかった。これは自分が成長した証拠なのかなあ、なんて。
「杏奈、俺も少ししたら行くけど多分こっちのが早いから鍵俺が持っておくな」
「え、あ、うんよろしく!!」
「のぼせるなよ」
巧はそういいながらお茶菓子を頬張った。そのリラックスしてる姿がなんだかおかしくて、私は笑いながら部屋を出た。