3次元お断りな私の契約結婚
それでも目の前にいる巧は私の顔を真顔で見た。その表情はどこか安心しているような顔立ちにもおもえる。
「……え、なに?」
「いや。そういうこと気にしてくれてるんだって思って」
わずかに微笑みながらビールを飲む。意味がよくわからない私は首をかしげた。
「え、何が。どう言う意味?」
「いや。杏奈には悪いけどちょっと嬉しかっただけ」
「え?」
「俺の過去に興味持ってくれるのが」
そう言った彼は、目を細めて私を見た。
その子犬みたいな顔を見てついどきりとする。私は持っているチューハイの缶を両手で包んだ。ひんやりとした感覚が伝わる。
「いや、めんどくさいこと聞いてごめん……」
「めんどくさくないよ」
「めんどくさいじゃん。どうせ何を聞いてもいい気持ちにならないのわかってるのに聞くなんて」
「いい気持ちにならないんだ?」
「そりゃ」
パッと顔をあげる。巧と思い切り目が合ってしまった。
私はすぐにまた逸らす。
狡い。
私は過去の恋愛なんてほとんどないんだから、巧は気にならないでしょう。私だけもやもやしてるの、狡い。
しばし無言が流れたあと、巧が立ち上がった。そしてビールの缶をテーブルにおくと、そっと私の方まで回り込んでくる。
彼は何も言わずに、私の隣にしゃがみ込んだ。何だか恥ずかしくて、私は巧の顔が見れない。
「杏奈」
低くて心地よい声が響く。
「悪いけど今めちゃくちゃ喜んでる」
「そ、そうですか」
「自分がこんなめんどくさい男だったとは驚き」
「私もめんどくさい女ですが」
「こっち向いて」
呼ばれた方に恐る恐る顔を上げてみれば、突然口を塞がれた。冷えたビールを飲んだあとだからか、巧の唇がひんやりと感じる。
胸がぎゅうっと苦しくなった。鼓動がうるさくて敵わない。
食べるように何度もキスを繰り返したあと、彼が一旦顔を離す。その時見えた巧の顔はどこか切羽詰まったような、余裕のない表情だった。
見たことない表情に息が止まる。苦しくて死ぬかと思った。
「俺はそのつもりで今日来たんだけど。いい?」
小声で彼がそう囁く。
いくら頭が残念で経験値がない私も、ここで『何を?』だなんて主語を尋ねるようなことはしない。
私は慌てふためきながら何とか答えた。
「…………そ、ういうこと、聞くかなあ……?」
「ははっ。確かに」
巧は短く笑うと、私の手を無言で強く引いた。引かれるがままに立ち上がると、すぐそばで敷かれていた布団に座らせられる。高級旅館のふわふわしたいい布団を感じた。
何かを言う暇もなく、巧がすぐ隣に座り込む。
きっと今の私は顔が真っ赤だ。熟れたトマト並みに。緊張で震えてきた手を何とか鎮めようと試みるも何も言うことを聞いてくれない。
目の前に座る巧がいつもとは違う人のように思えた。浴衣の襟から覗く鎖骨が綺麗だ。
「……え、なに?」
「いや。そういうこと気にしてくれてるんだって思って」
わずかに微笑みながらビールを飲む。意味がよくわからない私は首をかしげた。
「え、何が。どう言う意味?」
「いや。杏奈には悪いけどちょっと嬉しかっただけ」
「え?」
「俺の過去に興味持ってくれるのが」
そう言った彼は、目を細めて私を見た。
その子犬みたいな顔を見てついどきりとする。私は持っているチューハイの缶を両手で包んだ。ひんやりとした感覚が伝わる。
「いや、めんどくさいこと聞いてごめん……」
「めんどくさくないよ」
「めんどくさいじゃん。どうせ何を聞いてもいい気持ちにならないのわかってるのに聞くなんて」
「いい気持ちにならないんだ?」
「そりゃ」
パッと顔をあげる。巧と思い切り目が合ってしまった。
私はすぐにまた逸らす。
狡い。
私は過去の恋愛なんてほとんどないんだから、巧は気にならないでしょう。私だけもやもやしてるの、狡い。
しばし無言が流れたあと、巧が立ち上がった。そしてビールの缶をテーブルにおくと、そっと私の方まで回り込んでくる。
彼は何も言わずに、私の隣にしゃがみ込んだ。何だか恥ずかしくて、私は巧の顔が見れない。
「杏奈」
低くて心地よい声が響く。
「悪いけど今めちゃくちゃ喜んでる」
「そ、そうですか」
「自分がこんなめんどくさい男だったとは驚き」
「私もめんどくさい女ですが」
「こっち向いて」
呼ばれた方に恐る恐る顔を上げてみれば、突然口を塞がれた。冷えたビールを飲んだあとだからか、巧の唇がひんやりと感じる。
胸がぎゅうっと苦しくなった。鼓動がうるさくて敵わない。
食べるように何度もキスを繰り返したあと、彼が一旦顔を離す。その時見えた巧の顔はどこか切羽詰まったような、余裕のない表情だった。
見たことない表情に息が止まる。苦しくて死ぬかと思った。
「俺はそのつもりで今日来たんだけど。いい?」
小声で彼がそう囁く。
いくら頭が残念で経験値がない私も、ここで『何を?』だなんて主語を尋ねるようなことはしない。
私は慌てふためきながら何とか答えた。
「…………そ、ういうこと、聞くかなあ……?」
「ははっ。確かに」
巧は短く笑うと、私の手を無言で強く引いた。引かれるがままに立ち上がると、すぐそばで敷かれていた布団に座らせられる。高級旅館のふわふわしたいい布団を感じた。
何かを言う暇もなく、巧がすぐ隣に座り込む。
きっと今の私は顔が真っ赤だ。熟れたトマト並みに。緊張で震えてきた手を何とか鎮めようと試みるも何も言うことを聞いてくれない。
目の前に座る巧がいつもとは違う人のように思えた。浴衣の襟から覗く鎖骨が綺麗だ。