3次元お断りな私の契約結婚
「た、くみ、あの」

「何も言わなくていいから」

 そう優しく言った彼は、私をそっと抱きしめた。

 ああついに。

 大人の階段登る。二十七歳とっくに大人のくせに。

 広々とした巧の胸は非常に熱く感じた。アルコールを飲んだからか、それとも、巧もこの状況に少しでも緊張してくれていたら嬉しいと思った。

「杏奈」

 その声が、心地いい。

 巧の大きな手が私の首筋を撫でた。

 時だった。



 ピンポーン



 部屋にインターホンの音が響き渡る。

 私たちはピタリと停止した。

「……誰だろうこんな時間に」

 私が言うと、巧は気にしてない、とばかりに首を振った。

「どうせ酔っ払いが部屋間違えてんだろ」

 そう言って再び私にキスをしようとした時だ。

 ピンポーンと再度、場にそぐわぬ高い音が響く。

 私は慌てて彼にいった。

「旅館の人かもよ? 何かあったのかも」

「何かって」

「わかんないけど。それかお義母さんたちかも」

「こんな時間にこないだろ」

「出るだけ出た方がいいって」

 私がそう言うと、巧は非常に不機嫌そうに立ち上がった。旅館の部屋にはカメラ付きインターホンなんか設備されていない。私たちはそのまま玄関へと向かった。

 閉めてある鍵を開け、いざ巧がその扉を開けた。

「こんな時間にどちらさ」

「はーいこんばんは!!」


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