3次元お断りな私の契約結婚
「あとこっちとかね。これも買っておこう」
「い、樹くん、私そんな……」
「いーじゃん別に。服は持ってて損はないっしょ」
両手いっぱいになるほどの服を持ってにっこりすると、樹くんはそのまままだ買い物を続けていく。
その光景に、少しだけ笑った。
なんていうか。ほんと変わった子だよなあ樹くん。知り合えば知り合うほど不思議でしょうがない。こういう時は器用だなあと感心させられる。
……巧と初めて買いものにきた時なんて、めちゃくちゃだったのに。
よく分からない高級店に入って有無言わさず高い靴買って。嬉しかったけど、正直戸惑いが大きかった。
ああでもその後、巧もどうしていいか分からなくて戸惑ってたって教えてもらったんだっけ。意外とちゃんとしたデートなんてしてこなかったって。
お互い緊張してただけなんだって。
「杏奈ちゃん、化粧品とかも見てみよう」
いつのまにか会計を終わらせていた樹くんは大きな紙袋を持って立っていた。ぼうっとしていた私は慌てて彼に言う。
「ご、ごめんお金……!」
「あーいいのいいの。ほら、化粧品こそあって困るもんじゃないでしょ? 杏奈ちゃん可愛いからいらないくらいだけどね」
「あ、せめて荷物を……」
「いやいや、どこに女に持たせる男がいるんだよー。さ、いこいこ」
巧と真逆でデート慣れしてるであろう樹くんは、さらりと私の提案を流して店の外へと出ていく。私は慌ててその後を追った。
樹くんはとにかくファッションにあまり興味のない私のペースに合わせるのがうまかった。
興味ないなりに多少の好みはあるのだが、それをうまいこと察知して服を勧めてくる。
決して無理強いはしないし、あくまで楽しく買い物を進めた。
時間が経つにつれて少しずつ買い物を楽しめるようになった私は、笑って彼の服を選ぶこともできた。
服に化粧品、雑貨など、あらゆる買い物を持ちきれないほどした私たちは、それをタクシーに乗せてようやく帰宅した。
今までオーウェンたち以外の買い物なんてスッキリしたと思ったことはなかったけれど、確かに気分転換にはなったと思えた。
夜遅く、適当に夕飯をとった私たちはようやく一息ついた。
忙しく出かけていたので、なかなかゆっくりするタイミングもなかったのだ。
まず樹くんにお風呂に入ってもらい、その後私も入浴した。ようやく出てリビングに入った時、冷蔵庫を漁ったのか、リビングでチューハイを飲んでいる樹くんが私に言った。
「あ、飲んでるよ。杏奈ちゃんも飲みなよ」
我が家のように馴染んでいる樹くんに笑った。くつろぎかたもすごい、完全に羽を伸ばしている。
私は素直に冷蔵庫からチューハイを取り出して彼の隣に座った。今日は飲みまくりの一日だけれど、もう罪悪感なんて何もなかった。
蓋を開けて飲むと、レモンの酸味が喉を刺激した。
「杏奈ちゃんやっぱお酒強いよね、全然酔わないじゃん」
「そうかな」
「そーそー。昼間から酔わせようとしてるのに全然なんだもん」
「あは、酔わせようとしてる?」
「うん、酔わせて襲おうかなって」
「絶対思ってないでしょ」
私は笑いながら言った。樹くんは目を座らせてこちらを見る。
「俺杏奈ちゃん押し倒した前科あるはずなんですけど……」
「あれも悪ふざけでしょ」
「さっぱりしてるね。てゆうか今日はあれじゃないんだ?」
「え?」
「おにぎり」
ピタリと缶を持つ手が止まった。
私の今日の部屋着はいたって普通の黒いTシャツだった。おにぎりなんて着れるはずがない。
「い、樹くん、私そんな……」
「いーじゃん別に。服は持ってて損はないっしょ」
両手いっぱいになるほどの服を持ってにっこりすると、樹くんはそのまままだ買い物を続けていく。
その光景に、少しだけ笑った。
なんていうか。ほんと変わった子だよなあ樹くん。知り合えば知り合うほど不思議でしょうがない。こういう時は器用だなあと感心させられる。
……巧と初めて買いものにきた時なんて、めちゃくちゃだったのに。
よく分からない高級店に入って有無言わさず高い靴買って。嬉しかったけど、正直戸惑いが大きかった。
ああでもその後、巧もどうしていいか分からなくて戸惑ってたって教えてもらったんだっけ。意外とちゃんとしたデートなんてしてこなかったって。
お互い緊張してただけなんだって。
「杏奈ちゃん、化粧品とかも見てみよう」
いつのまにか会計を終わらせていた樹くんは大きな紙袋を持って立っていた。ぼうっとしていた私は慌てて彼に言う。
「ご、ごめんお金……!」
「あーいいのいいの。ほら、化粧品こそあって困るもんじゃないでしょ? 杏奈ちゃん可愛いからいらないくらいだけどね」
「あ、せめて荷物を……」
「いやいや、どこに女に持たせる男がいるんだよー。さ、いこいこ」
巧と真逆でデート慣れしてるであろう樹くんは、さらりと私の提案を流して店の外へと出ていく。私は慌ててその後を追った。
樹くんはとにかくファッションにあまり興味のない私のペースに合わせるのがうまかった。
興味ないなりに多少の好みはあるのだが、それをうまいこと察知して服を勧めてくる。
決して無理強いはしないし、あくまで楽しく買い物を進めた。
時間が経つにつれて少しずつ買い物を楽しめるようになった私は、笑って彼の服を選ぶこともできた。
服に化粧品、雑貨など、あらゆる買い物を持ちきれないほどした私たちは、それをタクシーに乗せてようやく帰宅した。
今までオーウェンたち以外の買い物なんてスッキリしたと思ったことはなかったけれど、確かに気分転換にはなったと思えた。
夜遅く、適当に夕飯をとった私たちはようやく一息ついた。
忙しく出かけていたので、なかなかゆっくりするタイミングもなかったのだ。
まず樹くんにお風呂に入ってもらい、その後私も入浴した。ようやく出てリビングに入った時、冷蔵庫を漁ったのか、リビングでチューハイを飲んでいる樹くんが私に言った。
「あ、飲んでるよ。杏奈ちゃんも飲みなよ」
我が家のように馴染んでいる樹くんに笑った。くつろぎかたもすごい、完全に羽を伸ばしている。
私は素直に冷蔵庫からチューハイを取り出して彼の隣に座った。今日は飲みまくりの一日だけれど、もう罪悪感なんて何もなかった。
蓋を開けて飲むと、レモンの酸味が喉を刺激した。
「杏奈ちゃんやっぱお酒強いよね、全然酔わないじゃん」
「そうかな」
「そーそー。昼間から酔わせようとしてるのに全然なんだもん」
「あは、酔わせようとしてる?」
「うん、酔わせて襲おうかなって」
「絶対思ってないでしょ」
私は笑いながら言った。樹くんは目を座らせてこちらを見る。
「俺杏奈ちゃん押し倒した前科あるはずなんですけど……」
「あれも悪ふざけでしょ」
「さっぱりしてるね。てゆうか今日はあれじゃないんだ?」
「え?」
「おにぎり」
ピタリと缶を持つ手が止まった。
私の今日の部屋着はいたって普通の黒いTシャツだった。おにぎりなんて着れるはずがない。