愛しの彼に溺愛~石油王の場合~
「そこからは普通にお話してただけよ。だからアキさんが心配するようなことは何もなかったわ」


弥生は優しい諭すように言ってくる。
その表情に俺の不安や苛立ちは静まっていく。

だがそのかわりに新たな疑問が湧いてくる。


「…なぁ、弥生」
「ん?なに?」
「同じミスってなんだ?」
「っへ?」
「さっき言っただろ?”同じミスはしたくなかったの”って」
「…あ」


弥生の顔がどんどん青くなる。

その表情見て確信する。
弥生は俺に何かを隠している。

なくなったはずの不安や苛立ちが俺に再度襲い掛かる。


「ごめんなさい…!私、あ、あの、思い出したくなくて…、というか、言ったら嫌われちゃうかと思って、それで、あの言えなくて、本当にごめんなさい!!」


俺が怒りに任せて口を開こうとした瞬間、弥生が勢いよく立ち上がり頭を下げてきた。
俺は怒っているのも忘れて、慌てて口を開く。


「お、おい、頭をあげろ!大丈夫だから、兎に角、落ち着け!」
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