愛しの彼に溺愛～石油王の場合～
今回送別会を行っているのは、ビルの五階にある居酒屋。
だから外に出るためには人通りの少ない非常階段が一番近い。

非常階段からは外になるので、気分を変えるためにはもってこいの場所である。
その事を思い出しながら非常階段に向かう。

非常階段の手すりに掴まりながら、服についているポケットの中を探すが目当ての物はない。


「あ…。携帯忘れちゃった」


ふと、さっきまでいた座席を思い出しながらつい言葉がでてしまう。

傍から見れば独り言を言う変な女になるなぁ。
でもしょうがないよ。
暇つぶしのアイテムを机に忘れちゃったんだもん。


「はぁ…」


思わずでる溜め息に、苦笑いをしてしまう。
そんな時、後ろから足音が聞こえてきた。

後ろの人も私みたいに外の空気を吸いに来たのかなぁ？
そう思い、少しズレようとしたとき「小林さん」と声をかけられた。
声をかけられたことにびっくりして慌てて後ろを振り向く。
そこには気まずそうに頭をかきながらこちらを見る森さんの姿があった。
< 47 / 169 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop