愛しの彼に溺愛～石油王の場合～

家にいても不安がぐるぐるするだけ。

「まだ近くのバーならやってるよね？」

いつの間にか私は一人そう呟いていた。

多分今の私にいるのはお酒で不安をとばすこと。
だから一人でお酒を飲む時によく行く近所の綺麗なバーに向かった。

あそこのマスターならきっと聞いてくれる。
…私の数少ない素顔を知る一人だし。


━カラン。


このベル聞くだけで落ち着く。

今日は酔いたい。
度数がキツイお酒が飲みたい。


「マスター、イエローパロットください」


『イエローパロット』はレディーキラーの一種で度数が強いわりに飲みやすいカクテル。
初めて飲むけど、酔いたいなら好都合のお酒。


「アンタこんな閉店ギリギリにこんな度数が高いお酒って大丈夫なの？」

「うん。大丈夫」


きっと、このお酒が不安をどこかに飛ばしてくれる。

ねぇそうでしょ？