愛しの彼に溺愛~石油王の場合~
「ち、違うの。この人とはただの遊びで!」


テンプレートのような言い訳をする古田愛理に、電話越しから溜め息が漏れる。
その溜め息に気づいていないのか二人はまくしたてる。


「そ、そもそも間違ってんだよ!俺は愛理のダチで、浮気相手じゃねぇよ!」
「そ、そうよ!そうなの!何勘違いしているの聡!!」
《さっき遊びっていったのはお前だろ?》
「その遊びは、友達と遊んだの遊びに決まってるじゃない!婚約者の私を信じないって最低じゃないの!?」
《信じた結果裏切ったのはお前だ。言っただろう。お前の浮気のことも、相手の男の素性も全て分かっていると》
「だから!!《今日は、大山卓也だったんだな》…っ!!」


その言葉に、二人して動揺する。

今日はってことは、別の人とも…!?


《リュウキって言うんだろ?本命のホストは。100万円のシャンパン入れるなんて随分景気がいいみたいだな?》
「…うそ、なんで…?」
《今さっき、リュウキくんと話をつけてきてさ。もうお前出禁みたいだが?》
「え…」
《それから、愛理の両親に伝えたから。あと大山卓也さんの奥さんにも、会社にも内容証明送ったから。今頃見ているんじゃないか?》


その言葉を聞くと「うそだろ!?」と言いながら大山卓也は走り出した。
恐らく急いで家に向かうんだろう。

もう遅いと思うけど…。
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