愛しの彼に溺愛~石油王の場合~
弟と話しているのにアキさんの眉間にはシワがよってる。
この兄弟もしかして仲悪い…?


「まさか兄さんの婚約者さんと会えるとはね。僕は神宮(じんぐう)シキ。兄さんの弟です。これからよろしくね」
「あ、私は小林弥生と申します。ご挨拶が遅くなって申し訳ありません!」
「そんなに固くならなくていいの、いいの」
「挨拶の場は後日設けるから安心しろ。で、揉め事を起こしたのか?」
「うーん、そうだね」
「…弥生を巻き込むな」


その言葉を聞いてつい、口を開く。


「シキさんは悪くないの!むしろ助けてもらったに近くて…、えっと…」
「何があった?」
「えっと…」


説明するのが難しい!
あくまで、見てるだけだったし…!


「兄さん、僕から説明するよ」
「…シキ」
「僕の大学の先輩、あぁ元先輩かな。もう卒業しちゃったしね。その人から頼まれて浮気現場に突入したってわけ。その現場に兄さんの婚約者さんが巻き込まれた感じかな?」
「俺の知っている奴か?」
「うん。伊豆原って人」
「…なるほど。確かに礼儀知らずな女と婚約したって噂だったな」
「そういうこと!」
「で、何故弥生が巻き込まれないといけないんだ?」
「あー、それは僕の口からはちょっと…。後で部屋にでも帰って聞いてあげた方がいいよ」
「どういう事だ?」
「こんな所で言わせるのは酷な話だと思うよ」


シキさんは察してくれたのか、優しく微笑みながらアキさんの質問をかわしてくれた。
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