愛しの彼に溺愛~石油王の場合~
あれから少し気まずいながらも二人で温泉に入った。
アキさんは何かを察してくれたのか、何も聞いてこない。

私から話すべきなんだろうけど、どうやって切り出したらいいのか分からない。

悩みながらベットに座る。
ふかふかだなぁ…、と場違いな感想を持ちながら考える。

折角の旅行。
そして結婚前のゆったりな時間は多分ここで最後。

私を意を決して話し始めた。


「アキさん!さっきは理由を言えなくてごめんなさい」
「いやいい。俺こそあそこで聞くべきじゃなかったな。すまない」
「ううん!そ、それでね。あの時なんで巻き込まれたのかって言うと…」


大丈夫。
アキさんは知ってる。

私がどんな目にあったのか。


「その…、伊豆原さんって人の婚約者が…」


アキさんと目が合う。
その目はとても優しくて、私を包み込むような愛情でいっぱいだった。

その目に勇気をもらい再度口を開く。


「私の元同級生で、私をいじめていた主犯格の人だったの…」


その言葉を放った瞬間、私の視界は真っ暗になった。
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