愛しの彼に溺愛~石油王の場合~
真っ暗な視界に少し動揺するが感じる温もりにすぐ理解する。
私は今、アキさんに抱きしめられている。

アキさんから聞こえてくる鼓動に安心する。


「アキさん…」

「そんな辛い事を言わせてすまない」


私以上に辛そうな声で、アキさんは私の肩に顔をつけながら囁いた。


「ううん。いいの。もう過去の事だから」


私はそう言いながら、彼の頭を撫でる。
大丈夫、心配しないでの意味を込めながら…。


「私はね、アキさんに会えて人付き合いがちゃんと出来るようになったんだよ?そりゃまだ昔の事は忘れらない」


でも、それでも。


「アキさんと過ごす時間は私にとって薬みたいなもので、昔の事を少しの間忘れさせてくれる。私アキさんといれてすっごく幸せなんだよ!知ってた?」


私の言葉にアキさんは小さく「…知ってた」と呟いた。

私はアキさんの頭を撫でるのをやめる。
それと同時にアキさんも私を見つめる。そして、どちらともなく近づいてキスをした。


「…愛してる」


キスの合間に器用に言葉を発するアキさんを見つめる。
私は息を整えるだけで精一杯なのに…。

熱っぽい視線。まだ少し濡れている髪。
その全てがアキさんを引き立たせる。

そんなアキさんからの愛情はキスだけではとどまらず、そのまま獣のように朝まで愛し合った。
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