ふたりきりなら、全部、ぜんぶ。


「ねっ、もう、」

「うん?」


いいかげん離れよう?

潤む瞳で必死に渚を見つめて、肩をトントンしたのに。


「っ……やば」

「っ!?なに、して」


私の肩に顔をうずめてすぐ。

するりと肩紐が腕に落とされたかと思ったら、結んだリボンがしゅるしゅると解かれていく音がする。


「ごめん、我慢できない」


「は!?」

「ベッド、行こう?」


声、あますぎ……っ。

余裕なさげな声にぶわっと体に熱がこもって、心が揺さぶられるけれど、

だ、め……。

少しの理性がストップをかける。


「だめっ、解かないで……それにごはんも、食べてない、し、」


「食べる前にちょっとだけ。
だめ……?」

「っ、だから……」


グッと密着する肩をなんとか押しのけようとしても、熱い吐息が耳元を掠めて。


「やぁ……っ」


首筋をつたう熱い唇に、甘い声が抑えられない。


「声かわいすぎ……はぁ、むぎのこと、むちゃくちゃに愛したい」


「っ、わかった、けど……ごはんは、食べなきゃ、だから……っ」

「……じゃあ、これだけ」


「なに……んんっ、」


ふれたのは一瞬。


ふれた唇も、開けたままのぶつかった瞳も、燃えるほど甘くて熱くて、背筋がぞくりとして。


「朝からずっとお預けくらって限界だから、あとでもっと深いキスする。覚悟しろよ」
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