ふたりきりなら、全部、ぜんぶ。
「さ、先にお風呂入ってきたら!?私、その間に洗い物しとくしっ」
やばい、今絶対変だった。
声上ずった気しかしない。
「え、けど顔赤いの収まってないし心配だから、俺やるよ」
「いいのっ!大丈夫!なので!」
「ほんとに?」
「ほ、ほんと……っ!」
ううっ、早くお風呂行って!
はずかしい、はずかしい……っ。
ジーッと私を見つめてくる瞳はどこか疑うようなもので、はしたない部分まで見透かされている気がしていたたまれない。
「じゃあ、お言葉に甘えて先に入らせてもらおうかな」
「う、うん。いってらっしゃい」
「なんかあったら遠慮せずに声かけろよ?」
さすがにお風呂中の渚に声かける勇気ないけど……。
「ん、わかった」
とりあえず、うなずいてはおく。
「よし。じゃ、いってくる」
はぁ……なんとか先にお風呂入ってくれそうでよかった。
私に背を向けて浴室に向かう渚にバレないよう、ホッと胸をなで下ろす。
片付けと渚を待ってる間に、心の準備がしたい。
昨日はもう流れでそうなっちゃったからあれだけど、今日は前もってイチャイチャしよう!ってわかってるのが、猛烈にはずかしいし、
先に入ってベッドで待ってるとか緊張でどうにかなりそうだから。
何より1人で興奮してるとか、こんな身勝手ではしたない自分、見せたくない。
「あ」
「ど、どうしたの?」
なにか忘れもの?
浴室へと続くドアの前でピタッととまったかと思うと、なぜかスタスタと私の前まで戻ってきた渚にドキッとする。
「……」
「ど、どうかした?」
「……んーん、なんでも。じゃ、入ってくる」
「え?」
けれどふっと目を細めて笑って、私の頭をポンとしただけで、今度こそ浴室へと続くドアがバタンと閉まる。
結局なにがしたかったの?
もしかして、緊張してるのバレてるとか?
んー、でもそれにしてはなんか、違うような……。
それから1人ポツンとリビングに佇んでいたら、衣擦れとシャワーの音が聞こえてビクッとする。
とにかく今は、片付けと、気持ちの準備、しなくちゃ……。