ふたりきりなら、全部、ぜんぶ。
「かわいい……大好きだよ。
俺のために、がんばってくれてありがとうな」
渚の声、優しい……。
体は火照ってるし、全身が沸騰してるみたいに熱くて視界がぐらくらするのに。
渚の声だけはちゃんと聞こえて、ホッとする……。
「はぁ……」
でも……。
交わる視線はどこかグッと何かを我慢してるみたいに、眉もひそめられてて。
「ん……もっと力抜いて、俺にぜんぶ預けて」
「う、ん……っ、」
「はぁ……めちゃくちゃキスしたい」
ほとんど聞こえないくらい小さくつぶやかれたのはきっと渚のひとりごと。
さっきまであんなに遠慮しないって感じだったのに、やっぱり渚は自分の気持ちより、私の体のことを優先してくれて。
「ん……むぎ」
「ふっ、ぅ……ん、」
「っ、かわいい……ほんとかわいい。
好きだよ」
顔やあちこちにキスが落とされて。
なだめるように髪も、後頭部も背中も頬までなでてくれるけれど。
「はずかしいのはわかってる。
けど、目閉じないで、俺のこと見てて」
なんて何度も至近距離で熱のこもった瞳に見つめられるから。
「っ、む、り……っ、」
「え?」
ふれてほしいって心はずっと叫んでいるのに。
それ以上に、今の渚の色気に、頭がおかしくなりそうで。
「電気、消して……っ」
なんとか力を振り絞って、渚の肩に顔を押しつけた。