ふたりきりなら、全部、ぜんぶ。
「ごめんなさ……っ」
「うん?」
彼氏の色気に当てられて、死にそうになるとか勝手すぎるし、矛盾してる。
ふれてほしいって思っているのに、その熱い目で私を見ないで、なんて。
「まだはずかしい?緊張する?」
「……」
「むぎ?」
「だっ、て……」
「だって?」
「渚……かっこ、よすぎるんだもん」
少しふれられるだけでいつもぼーっとするくらいにまで理性がなくなってたのに。
今はどうしても渚が大人の男の人みたいで、艶っぽくて、そっちばかりに気がいっちゃって。
「要は、俺がカッコよすぎて俺に集中できないってこと……?」
渚はちゃんと私がこの体質に慣れるために、私のためにって少しずつ段階を踏んでふれようとしてくれるのに、当事者の私がこんなんじゃ、いつになっても前に進めない。
はずかしい。申し訳ない。ごめんなさい。
いろんな気持ちが頭をグルグルして、何も言えなくて。
コクっ。
ぎゅっと渚の服を掴んで、うなずいたとき。
「あー……っ、もう!」
「ひえっ」
瞬間。
急な渚の大きい声にびっくりして思わず顔を上げたら。
「うっ、あっ……えっ、渚!?」
シュルっと何かが解かれる音がしたあと。
渚の顔を見る前に、視界が真っ暗になった。