ふたりきりなら、全部、ぜんぶ。
「なにっ!?」
なにも、見えない……っ。
「大丈夫」
ビクッ。
「俺のネクタイで目隠ししただけ。これなら俺の目も姿も見えないし、はずかしくないんじゃない?」
「えっと、」
「どう?きつくない?平気?」
怖かったら言って。
正直なところ、目の前で渚の声がするから怖くないし、気を使って縛ってくれてるみたいで全然きつくもないし、平気だけど……。
これ、は……っ。
「今日の特訓はこれでしようか」
「っ!?」
「かわいい。耳元で話しただけなのに、めちゃくちゃビクってした」
いろいろとやばすぎるって……!!
なにをされるか、なにをしようとしているのかが見えなくてわからないから、ますます敏感になっちゃう……!!
「あー……でも、これじゃ、まだ緊張とれないか」
「っ、あ、えっと、」
「渚先輩」
「は?」
「渚先輩って呼んでみてよ、むぎ」
「なっ、なに急に!?」
「んー、せっかく俺スーツ着てるし、年上設定ってのもありかと思って」
「年上設定!?」
なんでそうなる!?
「さっきのエプロン持ってきて、新婚ごっこもするのもめちゃめちゃそそるけど、それは実際に結婚したあとのお楽しみってことで。それに、エプロン取りに行く時間も惜しいくらい、早くむぎにふれたいし」
「っ、なっ!?」
「新婚っぽく、さん付けもいいけど、距離感じるからなしだし、ここは先輩ってことで」
もう、なにも頭に入ってこない。
すぐそばでクスッと笑う渚の声だけしか聞こえない。
「先輩呼びしなきゃだから、そっちに気とられて緊張もすぐにとれると思う。あと、はずかしさは……」
「な、に……っ、!?」
「今からむぎにたくさんふれて、理性がなくなるくらいにまで俺でいっぱいにするから、問題なし」
「やぁ……っ」
「は……、えっろ……すっげえかわいい」
耳、死ぬ……っ。
体が跳ねるのを抑えられない。
グッと近づいた気配がしてすぐ、ふっと息をふきかけられと思ったら、熱い何かが耳を伝って。
「ごめん、我慢できなかった。
けど今からは、ふれる前にどこさわるってちゃんと言うから、安心して」
「なぎ、さ……っ、」
「渚先輩」
「っ、ううっ……」
いくら私のためとはいえ、先輩呼び、なんて、こんなのもっと恥ずかしいよ……!
「むぎ、いい?今からキスするよ」
「っ、あ、耳……っ。
そんな、の、いちいち言わないでいい……っ、」
「だーめ。俺はむぎが嫌がることだけはしたくないから。ちゃんと無理なこと、嫌なことは言葉にしてほしい」
むぎのことだけは間違えたくないんだよ。
「っ〜〜!!」