ふたりきりなら、全部、ぜんぶ。
「っ、べ、別に笑ってないし」
「いーや、笑ってた。
ちゃんと見てたし、俺」
「うそ。暗いのにちゃんと見えるわけない」
「見えるんだなーこれが。俺むぎのかわいい姿は一瞬たりとも見逃さないって決めてるから」
「っ〜〜!!」
愛おしい。
ふれたい。
好き。好きだ。愛してる。
泣きそうなくらい、気持ちがとまらない。
はやる気持ちを抑えて、でももう一度、理性を働かせて問いかける。
「な、こっち向いてよ」
「や、やだ」
「頼むからこっち見て。俺、むぎの顔見れないと悲しくて死んじゃうんだけど。それでもいいの?」
わざと耳元で囁いて、目を開けるように促す。
な、頼むからこっち見て。
俺の方見て。
涙でぐしゃぐしゃだとか、顔真っ赤だからはずかしいとか、むぎの気持ちも尊重したいけど、今は無理。
俺にふれられて真っ赤になった顔も。
俺にふれられて気持ちよくなって泣いた顔も。
ぜんぶ、ぜんぶ俺だけのためで、俺を好きになってくれたことで、今のむぎがあるから。
「俺の所為でかわいくなってるむぎの表情、見せてよ」
今はもう、愛おしいって、その言葉しか出てこない。
「なぎ、さ……」
「うん。むぎ……俺の顔、見たい?」
「う、ん……っ」
「俺の目、見ても大丈夫?」
「大丈夫……」
「もう、はずかしくない?」
「っ、いじわる、言わないで……っ」
ゆっくりゆっくり俺へと振り返ったその瞬間。
「むぎ……っ」
不安そうな、泣きそうな。
でも嬉しくて照れくさそうな表情に。
「好きだよ」
胸が張り裂けてしまいそうなほどに、むぎへの想いがグワッと勢いよく込み上げてきて。
「ん……なぎさ」
その熱い体をぎゅっと抱きしめて、優しく抱きかかえた。