ふたりきりなら、全部、ぜんぶ。
「うっ、あっ、な、なに……」
顔、ちかいよ……っ。
カチッと火をとめて、くるりと体を渚のほうへ向けさせられて。
「これ、紛れもなく俺が贈ったものだけど。
つけてくれてるの見るだけでめちゃめちゃ興奮する」
夢じゃない。俺のなんだって。
ふわりと持ち上げられた左手の薬指にキスを落としたまま、じっと見つめられて。
「っ……」
言いようのないくらい、胸がきゅうっとなって。
「っ、ばか……朝から興奮しないで」
渚への想いがあふれて止まらない。
寝起きで乱れた髪、ゆるいTシャツから見える鎖骨。
掠れたセクシーな声、前髪からのぞく熱っぽい瞳。
どこをとっても。
朝から色気ムンムンすぎなのよ、ばか渚……。
熱くなる顔を見られたくなくて、ふいっと視線を逸らす。
「っ……今すっげえキスしたい。てか、する」
「は!?だっ、だめに決まって……んうっ、」
ああっ、もう……!
抵抗するまもなく重なる唇に、もっともっと顔が熱くなる。
「っ、は……ば、か……」
ごはん、できてるのに。
「ごめんな?
朝ごはん、作ってくれてありがとう。
一緒に食べよ?」
「うん……」
けど、おでこがぶつかって、甘いマスクに見つめられたらそれ以上なにも言えなくて。
「指輪、毎日つけて。学校でも、一緒にいないときでも俺のことしか考えられないように」
「うん……」
ねえ、渚。
私ね、もう、とっくに手遅れなんだよ。
だって、好きになったときから、私の頭の中はいつも渚でいっぱいで。
渚のことを考えない日は、1日もないんだよ。