ふたりきりなら、全部、ぜんぶ。
【渚side】
むぎと別れて教室に入った瞬間。
「おいおいおいおい渚!」
「なんだよ碧」
「なんだよ、じゃねーよ!おっまえ、やっぱりむぎちゃんと付き合ったの本当だったのか!?」
こいつ……。
「おい、次むぎちゃんとか言い出したらはっ倒すっつっただろ」
幸せモードを一気にぶち壊された俺の頭の中で、何かがブチッと音をたてて切れた。
「っ、だからごめんって!
頼むからそんな人を殺すような顔しないで!
俺まだ死にたくないっ!」
「なら、そのむぎちゃんは今すぐやめろ」
「わかったって!
ほんっと独占欲強いよなー……」
「……」
「すっ、すすす、すいっませんっしたああああ!
で、実際どうなんだよ!?む……」
あ?
「っ、じゃなくてっ!
ほんとに星見と付き合い始めたのか!?」
ほんっとにこいつは……。
はぁ……。
ため息をついて、机にカバンを置きつつ、今にも目を剥いて倒されそうな碧に口を開く。
「そうだよ。
一昨日にスーパーで会っただろ。それが証拠」