ふたりきりなら、全部、ぜんぶ。


興奮したように窓の下を指さす碧。

なにがあるっつーんだよ。


「はやくっ!見てみろって!」

「だからなに……っ、!!」


今はまだ授業時間内で、しかも男子校の水篠の中庭に女子がいることなんて、ふつうはありえないのに。


「むぎ……?」

「森山もいるじゃん!え、なにしてんのうちで!?」


むぎと森山だけじゃなくて、他にも何人か花柳の女子がいて。


なにか、持ってる……?

長方形の……白い、紙みたいな……。

あ、もしかして。


「美術か」


前にも1年のときにも見たことがある。

花柳の女子がうちの中庭でスケッチしてるの。


水篠は、花柳に比べて中庭が広いし、緑も多い。

前にむぎに聞いたらそんなことを言ってから、きっとそうだ。


「スケッチかー。一緒に話しながらやったら楽しそうだな」

「そうだな」
< 157 / 332 >

この作品をシェア

pagetop