ふたりきりなら、全部、ぜんぶ。
「えっ、えっ、なんで!?渚!?」
声は聞こえないけど、そう言ってるのがわかる俺はもはや手遅れだと思う。
「やっとこっち見た。
すっげえうれしい」
「っ〜!!」
ゆっくり口パクで伝えれば、ボッと顔を赤くしてうつむく姿がかわいくてしょうがない。
声も聞こえない。
離れてるのに気づいてくれるとか、もしかして俺の気持ちが届いたのかなーとか、ホント運命じゃね?とか、とにかく最高にうれしくて。
あー……今生きてきた中で一番幸せかも。
まじでにやにやとまんない。
「那咲!那咲!」
近くにいた森山に声をかけるむぎ。
「えっ、久遠!?それに土方も!?」
珍しく目を丸くして驚く森山がいる。
「気づいてはくれたけど、なんか複雑だわ……」
なんて、ガクッと肩を落とす碧だったけど、
「いや、むしろ今のでめっちゃやる気出たわ。
ぜってーオレを好きにならせる」
なんてそう言って、ルーズリーフになにかを書く碧にピンとくる。
そうだ。
「しゅ、きょ、う、は?」
口パクでそう言うむぎ。
あ、授業は?か。
「今自習中」
ルーズリーフにでかでかと書いたそれをむぎに見せる。