ふたりきりなら、全部、ぜんぶ。


「いつから見てたの?」


「むぎたちが来てからずっと」


「っ!?」


あー、かわいい、照れてる。

スケッチブックで顔を隠してるけど、

たぶん、首まで真っ赤なんだろうな。


顔、見たい。


「顔あげて」


隣にいた森山に見せる。

悪い、森山。

頼むからニヤニヤすんのだけはやめて。


「むぎ、むぎ、」


ナイス、森山!

ツンツンと隣でむぎの肩を叩いて、そして。


「よし、できた!」


隣で満足げに息をはいた碧は、太く書いた文字を森山に見せる。


「「えっ!?」」


ふたりがその文字に驚いたのが見えた、その隣で、俺も。


「むぎ」


「……?」


名前の書いた紙を見せたあとで、そしてもう1枚。


「俺とデートしよ」


瞬間、目を見開いたむぎだったけど、


「ぶはっ!」


いいよ、とか言葉じゃない辺り、ツンデレなむぎらしい。


「◎」


はずかしそうにしながらも、すぐに返ってきたその答えに、俺は愛しさといじらしさで悶えるしかなかった。
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