ふたりきりなら、全部、ぜんぶ。
イチャイチャしたり、人には言えないようなこと、できないから。
「っ、な……!?」
「だからむぎがねこじゃなくて、幼なじみでよかったって改めて思った」
「か、感想文かっ!」
「ふっ、」
もう、渚のやつ……っ。
「買ってあげるから、機嫌なおして?」
「私が物に釣られるとでも?」
「あっちにおいしそうなレモンティーが……」
「えっ、どこ!?」
「っ、くくくっ……」
「っ〜!!」
笑いを抑えきれないって感じの渚に、ぷるぷる震える。
いじわる!
「星見ー!渚ー!」
「土方くん!」
「喉乾いたし、休憩しねえ?
あっちにうまそうなジュースあったし!」
「いいね!」
「ふたりはなに見てたの?
おっ、マグカップ!?めっちゃいいじゃん!」
「へえ?ほーん?」
「那咲……考えてること、ぜんぶわかっちゃったんだけど」
これでもかとニンマリするその姿。
ほんと、渚のことになると人格変わるよね、那咲……。
「むぎ」
「なに……」
「はい、これ」
「なに……あ、」
差し出されたのは、キレイに包まれたさっきのマグカップ2つ。
いつの間に……。
「せっかくお互いのやつ選んだんだし、今日から使おうと思うんだけど。むぎも俺イメージのやつ、使ってくれる?」
「……し、仕方ないな」
「ふっ、ありがとう」
毎日使うのほんと楽しみ、なんて。
まだ私がムスッとしているのに、変わらず愛おしいと言わんばかりに頭をポンポンされる。
渚に直接は言ってあげないけど。
私だって、毎日使ってあげるよ、ばーか。