ふたりきりなら、全部、ぜんぶ。
「じゃ、じゃあいただきます……」
「はい、どーぞ」
「むぎも」
「う、うん……あー……」
なんだかここだけ異様に甘い空気が流れてる気がする。
「お、おいし………」
「なんで泣きそうになってんのよ……」
「男にはいろいろあるんだよ!」
「ん、どう?おいし?」
「うん……あ、ありがとう、渚」
「どういたしまして」
ゆっくり私の口から離れたストローがすぐに渚の口の中へ。
「ん、あま」
「っ……」
じっとこっちを見たまま、ぺろりと唇をなめた赤い舌が妙に扇情的に見えて、ふいっと顔をそむける。
「こんなとこでそんな顔されると、やばいんだけどな」
「なにが、」
「男にはいろいろあんの」
土方くんと同じこと言ってる……。
「渚〜!!
森山が男前すぎて泣けてくるんだけどーー」
「たしかにいろんな意味で自信なくすかもな」
「だろー!?なぐさめろよ!!」
「うっわ!くっつくな、ばか!」
「土方のやつ、なに顔真っ赤にして泣きそうになってんの?」
「あは……あはは、」
那咲……私、あなたがここまで鈍感だとは知りませんでした。