ふたりきりなら、全部、ぜんぶ。
「むぎ、ちょっと……」
「う、うん……どうしたの?」
那咲……ほんとうに土方くんのこと、友達としか思ってないっぽい……。
渚と土方くん、ふたりでワーワーしてる姿を見ていたら、横からコソッと話しかけられた。
「ちょっとさ、男子と別行動したいんだけど」
「別行動?いいけど、どっか気になるお店でもあった?」
「実はここに来たときからずっと行きたいと思ってたんだけど、男子がいるとちょっと選びにくくって」
男子?選びにくい?
いい意味で、あまり男子の目線とか気にしなさそうな那咲が気にするもの……。
あっ!
もしかして……。
***
「別行動?」
「うん、だめかな」
それからお店を出て、なんとか落ちついたらしい(?)土方くんと渚に提案してみた。
「いいけど……どこの店に行きたいとかは、聞かないほうがいい?」
「うん、できれば」
那咲も私も、渚とか関係なしに、男子にそれを選んでるところとか、見られるのはだいぶはずかしいから。
「……なんとなく察してしまった自分がはずかしい」
「碧……そう思うのは勝手だけど、それを言うのはどうかと思う」
「あたしも同感」
「ごめんって!頼むから引かないで!」
両手で顔を覆う土方くんの耳が赤くなってる。
ほんとう、見た目と中身にギャップあるなぁ……。
けどこのふたりの反応。
もしかして、渚も、土方くんも……。
「むぎ」
「うん?」
「終わったら俺に連絡して。店のすぐそばまで行くから」
頭をポンとして、やわらかい目で見つめられる。
やっぱり優しいなぁ……。
無理についてこようとしないところとか、私が言いたくないことは無理に聞いてこようとしない。
たまにいじわるだけど、渚のこういうところにキュンとくる。
「うん、ありがとう、渚」
「じゃあ、またあとでな」
「うん」
「森山!連絡まってる!」
「はいはい、ありがとう〜」