ふたりきりなら、全部、ぜんぶ。
■彼氏、キスうますぎ問題


「だれ……こんな行事考えたの」


「両校の生徒会だってさ。
前から要望多かったらしいよ」


だからって……。


「フォークダンスはいらなくない!?」

「それな」


「心配だから、教室まで着いてく」って渚を必死に説得してたら、なんとか現実世界に戻ってきたはいいものの。


「体質のこと、バレる……」

「むぎ……」


キャンプとか、そんなの云々の前に、この体質のことしか頭にない。


もはやハイテンションMAX、肉食花柳女子の悲鳴祭りな教室でのHRで、すべて説明された。


初めて、水篠・花柳との合同行事が決まったこと。


1年は球技大会。

3年は修学旅行。


そして私たち2年は、1泊2日でキャンプ(フォークダンス付き)。


お互いのことをよく知って仲良くなるため、それと泊まった日の夜にキャンプファイヤーで踊るフォークダンスの練習も兼ねて、体育の時間、水篠と合同ダンス授業が始まるらしい。


しかも仲良くなる他の方法として、昼休みはお互いの校舎を行き来してもいいことになってる。


ちなみに今日から。


いっしょにごはんを食べたり、話したり。


ギリギリキャンプは、まだ許せる……いや、正直バレない確率は低くはないから、まあ、1万歩譲ってなら許せる。


でもフォークダンス……フォークダンスってえええええーーーーッ!!


「つか、女子校に行ってまでなんで男子と手つながなきゃいけないの!?」

「ほんとそれ……」


キーッ!!と頭をかきむしる那咲に、机に突っ伏すしかない私。


せっかくこの体質に慣れてきたのに、ここで他の、しかも男子とフォークダンスだなんて。


さすがに腰に手を回すなんてことはしないと思うけど、ダンスをする以上、手をつないだり、体は密着するに決まってる。



1番過剰な反応が出てた渚とのふれあいがだいぶマシになってきたってことは、他の人もそれ以上に大丈夫だって思いたい。


でも渚や家族以外の男の人と手をつなぐなんてこと、したことないし……。


この間……朝日くん、だっけ。


あの人と一瞬手がふれただけでもビクッとしたのに。


慣れよりも、怖いって気持ちの方が勝っちゃって、また元に戻ってしまうんじゃないかって。

ほんと、不安しかない……。
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