ふたりきりなら、全部、ぜんぶ。
「おはよ、むぎ」
は……?
その声に眠気も思考も、ぜんぶ吹き飛んだ。
「おはようじゃな……っ!?」
「しー……親にバレる」
大声を出そうとしたら、もがっと口を押さえられた。
いつ入ってきたの!?
「ついさっき。
部屋から飛び移ってきた」
私の考えていたことをさらりと告げられて、クールな顔が、ゆっくりゆっくり近づいてくる。
ち、ちかいっ……!
見とれるくらいに澄んだ、二重の瞳。
スっと通った鼻筋に、薄い唇。
そして夜でも分かるくらい艶のある黒髪。
いつ見ても誰もが振り返るくらい美形な私の幼なじみ。
名前は、久遠 渚(くおん なぎさ)。
私が通う女子校に隣接する男子校に通っているけれど、いつ見てもうちの学校の子に告白されているほどの人気ぶり。
でもクールで、尚且つ女嫌いだから、女子とは最低限の会話しかしない。
基本スルーか、良くて一言。
親同士が高校からの付き合いで仲が良くて、生まれた時からずっと一緒の私たち。
さっき渚も言ったけど、家もお隣さんの私たちはお互いの部屋を行き来できるくらい近い。
そしてつい1ヶ月前から渚と付き合いはじめたんだけど……。