ふたりきりなら、全部、ぜんぶ。
***


「むぎ!久遠と土方のこと、迎えにいこ!」

「うんっ」

昼休み。

さっそく今日から、両校の行き来ありってことで、うちの屋上で4人でお昼を食べることになった。

ランチバッグは持ったし、お茶は……。


「あっ!」

「どうしたの?」

「お茶忘れた……ごめん那咲、先に行ってふたりのこと案内してもらってもいい?私、自販機行ってくる」

「ならあたしもついていくよ」

「へいき!ふたりのこと、優先してあげて」


なにしろふたりが花柳に来るのは初めて。

きっと私に気を使ってこっちに来てくれてるんだと思うから、待たせるわけにはいかない。


「うーん……あたし、久遠に怒られたくないんだけどなぁ」

「怒られる?」


「いーや、なんでも。こっちの話」

「そう?」

「うん。じゃあ、先に屋上行ってるわ」

「すぐ行くね」


それから那咲と別れて、足早に廊下を歩く。


わっ、もうさっそく!

あっちこっちで水篠の人を見かける。

楽しそうに話していたり、いっしょにごはんを食べてたり。


女子校に男子がいるって変な感じだけど、

なんかこの時間だけ、共学になったみたいだなぁ……。


渚ともそんな気分を味わえるなんて、今回のイベントもちょっぴり悪くないかも。

なんて思っていたら、いつの間にか自販機についていた。
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