ふたりきりなら、全部、ぜんぶ。


「自由って書いて、自由(みゆ)。おもしろい名前でしょ?」

「……」


な、なんか、まさに名前がすべてを表してるって感じ。

自由くん。

こんなに名前がぴったりな人、初めて見たんだけど……。


「みゆみゆー、お茶買えたー?」

そう思っていたら、遠くから、鳳くんが走ってくるのが見える。


「……みゆみゆって呼ばれてるんですか?」

「うん。鳳……真樹(まき)とは幼なじみなんだけど、昔からそう呼ばれてる」


おもしろいよね。

自分のことなのにどこ吹く風な朝日くん。

て、適当……。


「あれ、星見さんと、み……朝日がなんでいっしょに?」


「バレてるよ、真樹」

「ごめん、みゆみゆ」


苦笑いの鳳くんに、いいよ、と朝日くん。

仲よさそう……ちょっと違うかもだけど、渚と土方くんを見てるみたい。


「そういえば、さっき久遠と土方がそっちの玄関の方行くの見えたけど、行かなくていいの?」

「あっ、そうだった……!」


早く行かないと!

また余計な心配かけちゃう!


「これ、落ちてたお金」

「あ、ありがとうございま……ひゃあっ!?」


「え……」


ビクッ!

っ、やっ、やってしまった……!


今度こそしっかりふれてしまった手のひらに、大げさに震える体。


「……」


「あ、あのっ、えっと、ごめんなさいっ……!」

「あ……」


中途半端に伸ばされた手と、目を丸くして驚いたような朝日くんの顔が一瞬見えて、全速力で走り出す。


どうしよう……!

ぜったい変に思われた……っ。

ちょっと手がふれただけで、あんな、大げさ…っ!


しかも一度じゃなくて、二度も。


そんなメジャーな体質じゃないし、ただ手がふれてびっくりしただけだって、思われてる可能性のほうが大きいとは思うけど……。


あんなに、気をつけていたのに、これじゃ……。


鳳くんも、朝日くんも、万が一私の体質に気づいたとしても、周りに言いふらしそうな人ではないと信じたい。


でも今後のフォークダンスで、確実に手をつなぐ瞬間があるはず。


そうなったら、バレるのなんて時間の問題。


ほんと、最悪だ……。
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