ふたりきりなら、全部、ぜんぶ。
■彼氏、彼女足りない症候群
【渚side】
「あー……さわりてえ」
「なにに、とか聞くまでもないやつな」
授業終わりの休み時間。
机に突っ伏して、隣の花柳の校舎を見つめる。
「やっっっと克服できたんだろ?
だったらいろいろ、やり……イチャイチャし放題なんじゃねーの?」
「今なに言いかけた?」
めちゃめちゃ最低なこと言おうとしなかったか、こいつ。
「きっ、気のせいじゃね!?
で!?実際どうなんだよ!?」
「まあ、そうだけど。けど明日……明後日のキャンプ前に小テストあるじゃん」
花柳じゃなくて、水篠が。
中間とか期末もそうだけど、成績にめちゃくちゃ響くテストだから、復習は必須。
だから、むぎの症状がなくなってからの毎日は勉強しかしてない。
けど、テスト範囲の勉強はとっくに終わらせてるし、わかんないとこもないから、正直勉強しなくてもいい。
『いくら小テストとはいえ、大事なテストなんだし、気は抜いちゃだめだよ』
なんて、いくら大丈夫って言っても、私が不安だからって、何度も言い聞かされて。
むぎが俺のために、俺を思って言ってくれてる。
自分が思っている以上に彼女は自分のことを愛してくれてる。
そう思ったら。
『わかったよ……』
ふだんツンツンな彼女のデレに弱い俺は、もちろんうなずくしかできなくて。
真面目なとこ、ほんとにいいと思うし好きだけど。
「死ぬ……」
正直、むぎとの時間がなさすぎて窒息する。
むぎ不足で、まじで頭狂いそう……。