ふたりきりなら、全部、ぜんぶ。


その後も。


ダンダンダン!

ドリブルしたあと、何本も華麗にシュートを決める渚。


すごい……ぜんぜん衰えてない。

スリーポイントも外すことなく、なんなく決めてて、思わず渚のところへ行くのも忘れて見とれてしまう。


「っ……あっつ」

「っ!!」


シャツをくしゃりと持ち上げて、顔に流れる汗をふく渚。

っ、色気がやばすぎる……。


汗で濡れた前髪をかきあげる仕草とか、シャツで顔を拭くたびにチラチラ見える腹筋とか。


直前できない。

目に毒すぎる……。


私はいつもあんなかっこいい人と……。


てか、ちょっと待って。

いくら彼女とはいえ、彼氏の姿なんてコソッと見てるなんてただの変態じゃない?


なんて、くらっとめまいがする頭を抑えていたら。


「あー……つっかれた」

「早く帰ろうぜー」


だれか水篠の人が近づいてくる声がする。

やばい……!

こんなとこで1人座ってこそこそしてたらぜったい怪しまれるし!

いかにも私、制服合ってないし、花柳の生徒って気づかれたら……!


「な……じゃなくて、久遠!」


私は弾かれたように渚の前へと飛びだした。
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