ふたりきりなら、全部、ぜんぶ。
てか、なんで私名字で呼んじゃってんの!?
なんて思う間もなく。
「は?」
声をかけたとたん。
ギュンと私の方へ振り返った渚の目はこれでもかと見開いていて。
「……」
な、なに……?
上から下まで穴があくんじゃないかってほど、見つめられた。
「……」
「……」
ま、まさか渚……私って気づいてない?
私の姿を見たまま何も言わないし、固まっちゃってるし。
というかノリでここまで来ちゃったけど怒られる未来しか見えてないから、ここは……。
「あ、悪い、人違い……」
慌てて背を向けて立ち去ろうとしたけど。
「ちょっと待て」
「え……っ」
とっさに腕を掴まれて、逃げるタイミングを失ってしまった。
「……」
えーと……なに、この、沈黙?
「久遠?」
腕だけど。
渚が私にふれてくれた。
それだけで満たされたいく私は本当に単純。
それから、再度私を頭のてっぺんからつま先までじっと見つめた渚は、ふっと口角を上げて。
「へえ、おまえも2年なんだ」
「そ、そうなんだよ」
たぶん、ネクタイの色のこと、言ってるんだと思う。
水篠は学年によってネクタイの色がちがうから。
「てっきり1年かと思った。
なんか妙にシャツの袖余ってる気するし。特にズボンとか」
ギクッ!
そう言って、ボールを床に置くと、私に近づいてきた。