ふたりきりなら、全部、ぜんぶ。
「ふーん……なら、好きな人は?」
「えっ!」
「その反応。いるんだ?」
「あっ、えっと、」
やばいっ、これはどう返すのが正解!?
渚に嘘つくのは嫌だから、
「い、いるよ」
「へえ、だれ?」
「ふあっ!?」
っ、やばいっ!
「わっかりやす。なに、もしかして俺の知ってるやつ?」
「そ、それは……」
「まあ、恋愛なんて人それぞれだし、いいと思うよ。別に男が男を好きになっても」
「う、うん……」
男では、ないんだけどね。
「さっきから顔赤いけど、熱でもあんの?」
「あ、えっと……これは、」
「それってさ、期待していいの?」
「え?」
「俺と話してるから、そうなってるって、思ってもいいの?」
「えっと、それ、は……」
そう言って、私の頬に手を当てて。
「俺」
鼻がぶつかりそうなほど、近い距離で囁いた渚は。
「俺も好きだよ、むぎのこと」
私の頭のウイッグをずるりと落とした。