ふたりきりなら、全部、ぜんぶ。
■彼氏、彼女に尊死、溺死

【渚side】


「なっ、なっ……!?」

「最初からわかってたよ」


口をパクパクさせて言葉も出ないむぎの体をぎゅっと抱きしめる。


「こんなかわいい男子、いてたまるかっての」


つーか最初、声かけられたときから分かってたし。


「ええっ!?」


「いや、わかるだろふつー。
何年むぎのこと見てきたと思ってんの」


「ううっ……」


はずかしい、と、俺の胸に顔をうずめる。


上から見下ろせば、耳も、首も、胸元まで真っ赤になってるのが丸見えで。


首から落ちた汗が、つつーと、胸元に落ちていく。


っ、あー……えろすぎだろ、まじで。


無意識にゴクリと喉が上下して。


今にもこの服をぜんぶ脱がして、めちゃくちゃにしたい衝動に駆られて、慌ててふいっと顔を背ける。


ただでさえ、俺のシャツを着て、ぶかぶかなかわいい姿。

ただでさえ、むぎ不足だってのに、こんな離れたくないって言わんばかりに抱きつかれて、


久しぶりの彼女の体温と甘い彼女の香り。


こんなの、興奮しない男のほうがおかしい。


「渚……?」

「なに……?」

「どうしたの?
顔、真っ赤だけど」


おまえのせいだよ、このバカ。

自分がどんな格好で、今どんな表情してるかわかってんの?

俺にふれてほしいって期待して、うるんだ目。


ほんと、勘弁して……。


彼女の色っぽすぎる姿に、暑さも相まって、頭がぐらっとする。
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